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素直になれないクリスマス⑤
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「あー!疲れた!」
病院を出て、俺は大きく伸びをした。
吐く息が白い煙となって、空へと昇って行く。病院の受付のすぐ近くにある、クリスマスツリーがとても綺麗だった。
スマホを見れば、時刻は22:30。
「大分遅くなっちゃったな。って、え……?」
小さく呟きながらスマホの画面をよくよく見て、俺は思わず言葉を失った。
そこには、凄まじい数の着信が……俺は、一瞬で血の気を引くのを感じる。震える手で確認すれば、全て成宮先生からの着信だった。
「マジかぁ」
俺はその場に蹲る。
襲る襲るメールを開けば、
『クリスマスくらい、早く帰ってこい』
の一文が……しかも、そのメールは3時間前に届いたものだった。
「だって先生、クリスマスなんて興味ないんじゃ……」
俺は呻き声をあげる。
それでも、今日出勤する前にも、職場でも、何か言いたそうに俺の方を見ているのは感じていた。
「はっきり言ってくれればいいのに……!!」
俺は、ガシガシと頭を掻き毟る。
「あ、プレゼント!?」
ハッと我に返る。
「俺、何も用意してない……」
パニックになって泣きたくなった。
きっと成宮先生は、クリスマスを楽しみにしていたのかもしれない。今頃、いつも以上に豪華な食事を用意して、俺の帰りを待っていることだろう。
「なんて俺は駄目な奴なんだろう」
いつも付き合ってた彼女に、『気が利かない』とか、『優しくない』っていう理由でフラれてきた。
それを、今まさに、俺は繰り返そうとしているなんて。
「ごめんなさい、成宮先生」
俺は、猛ダッシュで駅へと向かった。
「やってるわけないか……」
駅に着いて俺は大きな溜息をつく。
こんな遅い時間に、デパートが営業しているはずがない。それどころか、みんな家でクリスマスパーティーとしているのだろうか。いつもに比べて、人波がまばらだった。
「どうしよう……先生へのプレゼント……」
心底困ってしまった俺が辺りを見合せば、軽快な音楽と共に、明かりが煌々と灯る店が……。
「あった、先生へのプレゼント!!」
俺は、その店に慌てて駆け込んだ。
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