アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
意地悪なのに優しい人⑯
-
「沙羅ちゃんを助けてあげられませんでした」
「うん。でも、お前は頑張ったよ」
「でも、でも……俺は、助けてあげたかった。だって、俺は医者だから」
「そうだな。助けてやりたかったんだよな」
「はい……助けてあげたかった」
「わかった、わかったよ」
成宮先生は、子供のように泣きじゃくる俺を抱き締めて、優しく頭を撫でてくれる。まるで、泣く子供をあやすかのように、優しく、優しく……。
「泣くな、水瀬は頑張ったよ。ハムスターなりに」
「ひ、酷い……!」
「ふふっ。冗談だよ」
トクントクン。
まただ……胸が痛くて、苦しい。
でも、なんでだろう……めちゃくちゃ幸せだ。
俺は、自分を抱き締めてくれる成宮先生の力強い腕に、そっと体を預ける。
この人には、自分の全てをさらけ出しても大丈夫だって思える。この人は俺のどんな汚い部分だって受け止めてくれるから。だから、大丈夫だって。
「もう泣くな。葵……泣くな」
俺の頭を撫でながら、優しく髪を搔き上げてくれる。
頬を伝う涙を唇で掬ってくれて、そのままチュッと唇にキスをくれた。
泣き疲れた俺が成宮先生を見上げれば、びっくりするくらい穏やかな顔をした成宮先生と視線が絡み合う。
「ようやく泣き止んだな」
そう微笑む成宮先生を見れば、また胸がギュッと締め付けられて、呼吸ができなくなってしまった。
「葵……」
名字ではなく、名前で呼ばれた俺は、くすぐったくて肩を上げる。
チュッチュッと触れるだけのキスを貰えば、離れていってしまう成宮先生の唇が恋しくて……先生の首に腕を回して、自分からキスをねだった。
チュルンと待ち侘びた成宮先生の舌が口内に侵入してくれば、夢中でそれに舌を絡める。チュクチュクと舌を絡め合ったり、チロチロと舌先で愛撫しあったり。俺は、成宮先生の蜂蜜みたいに甘い唾液さえ、全てを飲み込みたい一心で唇を貪った。
「もっと……ねぇ、もっと……お願い、離れてかないで……」
「はいはい。もっとキスしような」
先生の笑い声が鼓膜に響いて、俺はそれに陶酔してしまう。
「気持ちいぃ」
キスの合間にうっとりと囁けば、成宮先生が優しく抱き締めてくれる。
俺は、その胸にそっと顔を埋めた。
「葵。お前は病気だ」
「え?やっぱり、俺、病気なんですか?」
「そう。お前は病気だ」
半分夢心地だった俺は、一気に現実の世界へと引き戻された。
「俺、何の病気なんですか?」
「お前の病はな……」
成宮先生が俺の顔を覗き込んでくるものだから、思わず息を飲んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
52 / 67