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クリスマスSS Mの愛1
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クリスマスSS プレゼント(Mの愛)
(…ヤバい。)
十二月二十三日、金曜日。午後六時過ぎ。我妻京司は社用のノートパソコンで軽やかなブラインドタッチを続けながら、内心焦りに焦っていた。…それもそのはず。
(仁に渡すクリスマスプレゼント、まだ用意できてない…っ!!)
ここ数日、我妻は年末年始に向けての仕事の作業に忙殺されており、朝から晩まで頑張る→フラフラでどこにも寄る力がなくて帰る→ぶっ倒れるように寝る、のルーティーン地獄と日常が化していた。そのため、どこにも寄れていないし、見れていない。候補すらあげられていない。
(…ヤバいヤバいヤバい。いッ、いや、落ち着け、我妻京司。いざとなりゃ駅近で適当に見繕える。…けど、あいつも会社ここだし、駅のモノなんてすぐ気づけるだろうしな~。通販でギリギリ間に合わせて…。でも、せっかくのプレゼントだし、きちんとこの目で品定めしたいっていうか…。俺のが仁より年上だし、コケたくないもんな…。)
パソコンをカタカタ言わせつつ、我妻は眉根を寄せ、表面上は静かだが内心悶えに悶えていた。
(ケーキ…は、買う。けど、なんかクリスマスケーキとプレゼントって、俺の中だと、別物なんだよな。恋人に贈るプレゼントなんだし、愛情こもったもんやりたいし。けど、この分だと今日もある程度の残業は避けられまいし。日付が変わる前には家に帰れそうだけど、それだと時間的にもプレゼントを見回る時間が…。そもそも、店が開いてない可能性あるし…。)
ぐちゃぐちゃと考える我妻のデスクに、ポニーテールをした女性の同僚がやって来る。
「…我妻さん、ここ資料置いておきます。」
「おぉう。サンキュ…。」
返事をする間にも、我妻はタイプする指やマウスを動かす手を休ませない。全ては、落合が待つ我が家に一刻も早く帰る余裕を持たせるためだ。
(二十五日のディナー予約とか??ぜってぇとれねぇだろ。っつか、ディナーか…。)
我妻の手が、一瞬だけ、ぴたりと止まる。
(…最後に一緒に食事したのって、いつだったっけ。)
二人して本社に栄転し、よろこんだのもつかの間。それぞれの仕事が忙しすぎて、まともに顔も合わせられない日々が続いている。愛の巣は常にガラガラだ。食事はもちろん、会話も最低限なものしか出来ていない。ケンカはないが、それもまた…先行きに不安を覚えてしまう。
(…っつか。最近…。)
「…シてねぇ。」
ぼそっと何気なく口にした我妻は、次の瞬間物凄い勢いで左右を見回した。…幸い、誰もが仕事に集中しており、引っかかりを覚えた者はいないようだった。我妻は胸に手をあてて、ほっと胸を撫で下ろす。
(あぶねぇ、あぶねぇ…!!職場で一体何言ってんだ、俺!!)
我妻はそろそろと片手を持ち上げ、口元を覆う。両頬が、ほのかに火照り始めていた。
「…全部、仁のせいだ…っ」
悔し紛れに呟いた言葉は、オフィスの喧騒に紛れて消えていった…。
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