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12 高橋side
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高橋side
…先生、いるかな
まだ何となく本調子じゃないままに、俺は保健室まで来た
――コンコン
「失礼します…石川先生、いますか」
「お、高橋。おはよう」
先生はちょうど窓の近くに立ってコーヒーを飲んでいた
仕事の前の一杯、みたいな雰囲気が大人っぽくて少しいいなとぼんやり見つめる
「どうした? 何か相談か?」
「……少し、ここにいたくなって」
相馬達を殴りそうになりました、なんて言えないから教室に居にくいことをなんとなく伝えればここにいてもいいと言ってくれた
「…ありがとうございます」
「少し、疲れたか」
「え…?」
顔色悪いぞ、と頭を撫でられた
そのまま俺をベッドまで背を押して連れていく
「そろそろ一週間ぐらい経つし、疲れが出てもおかしくない。部活もあるんだろ。今日ぐらいゆっくり休め」
「…すいません」
疲れが出るってことを俺はあまり良いことだとは思ってない
今だって祐のことで頑張らないといけないのに、疲れを理由にしてそれをサボってる
その間に何かあったら、取り返しのつかないことが起こっていたらと考えてしまう
「祐が、高橋のこと考えて悩んでたぞ。良かったな」
「…え、俺のこと」
きっとマイナスのことだとは思うけど、それでも先生は喜んでいた
「俺、まだ…全然坂崎のことわかってないです。何が好きで、何が嫌いでとか。普通はそういうことからでしょ」
会話の内容が全部マイナスだ。友だちになる為の会話じゃなくて信じてもらえるかどうかのとても難しい会話から始まってるんだ。そして、まだそこから抜け出していない
「それはまだ祐の状態が良くないからだな。だがお前らはそんな会話してないのにちゃんとそれぞれの心に相手が残ってるだろ」
それは、お互いに少しずつ信用していってるからだと先生は言う
「…本当に、そうですか」
「祐と何年もいる俺だから言えることだ。大丈夫、きっと高橋のこと信じてくれる」
何年もいる…一緒にってことかな
「あの、先生と坂崎って…どういう関係、なんですか?」
坂崎と先生のこと、今なら聞いてもいいよね
「そう言えばまだ言ってなかったな。小さい頃に祐は両親を亡くして、友人だった俺がそのまま引き取ったんだ」
「…両親、いないんですか」
まさか…親までいないなんて
それじゃあこうしていじめられてても親には相談出来なくて…だから、先生が寮まで来てたんだ
何かあったら先生に連絡して欲しいと電話番号を渡してきたことも、ずっと坂崎を守ってきた理由もやっとわかった
だって親が学校で仕事してて、子供がいじめられてるんだよ…それを知ったから
「……っ」
「お前が気に病むことじゃない。俺は高橋がこっちに来てくれて本当に良かったし、嬉しかったんだ」
「先生…」
「祐はお前と関わりたくないと言ってはいるが、それはもう通用しないと思ってる。祐の中でまだ高橋が離れる機会がどこかにあると考えてるだろうがな。だが一緒にいてやれば、段々と気付いて本当に少しずつ距離を縮める努力をする。だから、お前は少し休んでも大丈夫だ」
「……」
先生が坂崎の話をしていてわかったことがある
表情が優しくなるんだ、それに大事にしてるっていうのが言葉でわかる
だから…きっと大丈夫
もう一回、今度はすごく優しく頭を撫でられて俺は目を閉じた
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