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14 高橋side
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高橋side
「はい、今のところ。テストで出すから線付けといてねー…あら、高橋。具合悪いって聞いてたけど大丈夫?」
ゆっくり教室のドアを開ければすぐ社会科の相道先生が気付いてくれた
「…その、早退します、ので紙渡しに来ました」
「そう。お大事にね。無理しないで」
「はい。ありがとう、ございます」
先生とのやりとりの間誰も話していなくて、それが少し怖かった
席に戻って勉強道具を鞄に入れてると先生が授業を再開する
誰かからノートを借りないといけないと考えた瞬間に、そんなことが果たして出来るのかとも思った
あいつら以外に坂崎を嫌ってる人はいないかもしれないけど、今日見たく坂崎がいないと大人しいから何となく嫌に思ってる人が多い。それで仲間だと思ったら…貸してもらえなさそう
「高橋、おいってば」
「っ、西田」
「大丈夫か? って大丈夫じゃないから早退すんだろうけどさ。お前最近なんか変だったし。何か相談あんなら言えよ、聞くだけなら馬鹿な俺でも出来るから」
「…ありがとう。じゃあ次、俺が学校来たらノート見せて」
おう、と嬉しそうに笑う西田に罪悪感でいっぱいになる
「それと…」
「ん?」
「あ、いや、何でもない。相馬達、相変わらず静かだね」
「そうだな。あいつら成績もいいしなー、良い学校行かせたくて教師も坂崎のことは隠して内申点取ってるって聞いたぜ」
「…っ、そう、なんだ」
あくまでいじめのことは隠して卒業させたいってことか
…嫌なことを聞いてしまった
実際、いじめ調査みたいなものが入ったとしてももみ消されそう
「そういう愚痴は、今度俺の部屋来たときにまたしよ。とりあえずお前は寝ろ。三日ぐらい寝ろ、今すぐここから立ち去って部屋に帰るのだ~」
「はは、うん、そうするかな。ありがとう」
面白い口調になったのに少し笑いながら俺は鞄を持って教室を出た
「…西田、ありがとう」
本当は西田とずっと友達でいたかったよ
あとどれくらいいられるかわからないけど別れる時が来るまでは、こうして笑っていたいな
西田の優しさに涙が出そうになるのを我慢しながら保健室へと向かった
――コンコン
「失礼します…」
「お、来たな。大丈夫だったか」
「はい。先生も友達も心配してくれました。俺が少しビビり過ぎてたぐらいで…ちょっと悪いなって思いました」
そうか、とコーヒーに口を付ける先生の顔はほっとしたような表情だった
「でもそれも、坂崎を助けたら全部なくなるんですよね」
「…辞めるか?」
「いえ。そんなことしません。俺はもう坂崎を助けるって決めましたし、先生にもちゃんと伝えました」
そんな中途半端な決意なら先生にも坂崎にも伝えたりしない
今みたく揺らぐことはあるかもしれないけど、辞めたりなんて絶対しない
鞄を椅子の下に置いてそのまま椅子に座ると先生がどこから取ってきたのかリンゴジュースを俺にくれた
「水分補給。大事だからな」
「ありがとうございます。あの、俺何か手伝いますか? 掃除とかなら出来ますけど…」
具合はもう悪くないし、勉強するにも授業を受けていないからわからないし、かといって仕事をする先生の邪魔はしたくない
休むにもさっきまでずっと寝ていたから眠くないし…
「いや。掃除はいつも放課後に保健委員が来て補充と一緒にやってくれる。勉強は? ワークとかないのか?」
「それが、今日までの分はほとんど終わってるんです。期末試験もまだ先だし、今までの分もサッカー部が週一で課題やろうデーをしてるので溜まってもいません」
「へえ。初めて聞いたな、そんなことしてるのかサッカー部。通りで成績良い奴ばっかりだとは思ってたんだよ。なるほどな」
全員が律儀に勉強をしてるわけじゃないけど、週に一回必ずどこかの空き教室を使って先生がわからないところの授業をしてくれる
それを課題やろうデーと勝手に名付けて、割とそれが好評でじっくり出来るし理解出来ると皆積極的に参加していた
部活が終わるのは八時、だけどその課題やろうデーは九時までやったりしている
「顧問の佐渡先生もすごく楽しそうに教えてくれるんです」
「あー佐渡先生か。あの人の話は面白いんだよな。聞いてて飽きない。そうか、生徒にも人気なんだな」
「たまにマニアックな話しますよね」
「そうだな。だが、ああいう先生がいるとこっちも刺激になる。生徒への接し方も、先生同士のいざこざもだいぶ緩和されるんだ。いつも助かってる」
「へえ。本当にいい先生なんですね」
――ピリリリ、ピリリリリ
「悪い、俺だ」
「電話ですか? 俺外しますよ」
「確かに電話だが、ここにいても大丈夫だ。…もしもし」
ああ、と電話に出た先生は窓の方へと移動した
本当に俺がいてもいいのかどうか考えながら、せめてじっくりは聞かないよう保健室を歩いてものを見ていこうかなと端っこに歩き出した
「今からか? まあ、いいが」
「…?」
「そうだな、診てくれると助かる。高橋も増えたし」
「俺?」
誰か来るのかな
「ああ。わかった、寮への行き方はわかるな。それじゃ、後で」
ピ、と電話が終わって先生が俺を呼んだ
「放課後の時間ぐらいに俺の知り合いが来るから、一緒に会ってくれるか」
「あ、はい…いいですけど。俺邪魔じゃないですか?」
「いや。祐にも会いたいって言ってるし、高橋のことも紹介したいんだ。いいか?」
「それなら、はい」
坂崎はその人に会ったことあるのかな
「ちなみにどんな人ですか?」
「どんな人…見た目はチャラそう…だな」
「え、それ坂崎大丈夫なんですか」
チャラいって…先生はむしろ大人でかっこいい感じなのに、チャラいのか
「実を言うと祐には小さい頃にしか会ってないし、忘れてるな」
「……」
ヤンキーとか苦手そうだし、俺も近寄りたくはないな
「だが、あいつはカウンセラーだし中身はいいやつだ。高橋も気に入ると思う」
「…何だかいろんな意味ですごそうな人だとはわかりました」
「はは、まあそう警戒しなくても大丈夫だし、警戒してもすぐバレるからそんなに身構える必要もない」
見た目はチャラい、でも実はすごい人…か
世の中には見た目だけで決まるわけじゃないとはよくテレビでも言うけどその人が正にそうって事かな…
「わっ」
「身構えるだけ無駄だって言っただろ。考えすぎるなよ」
ぐしゃぐしゃに頭を混ぜられて思わず声が出た
「…頑張ります」
先生がいい人だって言うから大丈夫、だけどまだ少し怖そうとも思いながら残りの時間をゆっくりと過ごすのだった
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