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18 高橋side
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高橋side
「へえ。意外だね」
「ですよね、俺もさすがに笑っちゃって…あ、すいません。こんな話ばっかり。坂崎の為に来たのにこっちに来て良かったんですか?」
桜井さんが俺のところに来てからは坂崎の話じゃなくて俺のことが知りたいからって学校の話だったり家の話だったりといろんなことを話していた
話していたというより、桜井さんに質問されて俺が答える方が多かったし何だか緊張して上手く答えられなかったけど今はだいぶ落ち着いて話せるようになった気がする
「うん。坂崎君の方は事前に達也から聞いてたし、むしろ坂崎君が俺に慣れるまではあまりじっくり話しない方がいいからね。今一番頑張ってる高橋君のことを知りたかったから良いんだよ。俺なりにサポートしたいし」
そう言ってにこりと笑う桜井さんに、俺は少し恥ずかしくて目を反らす
「…俺は、別に普通です。部活して勉強しての繰り返しで特に何か出来るようなものもないし、クラスも坂崎の件がない限りは平和、なので…」
西田のように愚痴大会みたいなのはあるけどそれもお互いに言ったらスッキリするからそれで終わりな部分もある
俺たちはそれでやりくりしてるけど、坂崎は全然違うし放っておけない
「今後は坂崎の方に行くのでそれも全部崩れるんだと思います。正直怖いです、だけどそれでしか方法がないんだったら俺、やります。ただでさえ、信じてもらってないのに…」
掃除の時だってすごく嫌そうな顔をしていたし、他の時でもまだ信じてないんだなっていうのがなんとなくわかる
早く信じてほしい、少しでも坂崎の助けての声を出せるように…それをちゃんと拾えるようになりたい
だから…だけど、上手くいかない
「言ったでしょう、坂崎君の方に行く高橋君のサポートをしたいんだ。いじめられる側に付くことはものすごく勇気がいることだし、すごく辛いんだよ。坂崎君はその生活に慣れてるけど、高橋君は違うよね。いじめられたことがあるなら話は別だけど」
ふわりと俺の頭を撫でる桜井さんは少し悲しそうだった
「…っ、ない、です」
「それなら尚更、俺は坂崎君だけじゃなくて高橋君のこともちゃんと見るからね。今日も疲れた顔してたんだって? 早退したって聞いたよ?」
「…はい。でも、午前中ずっと寝てたら治ったので大丈夫です」
「そう? ちょっと顔上げてくれる?」
ふと顔を上げれば桜井さんが不思議そうに俺の額に手が当たる
少しひんやりしてふうと自然と息を吐くと、うーんと呻いたのが聞こえて首を傾げた
「ちょっと熱っぽいかな」
「え」
「一応計ろうか。体温計借りてくるよ」
「あっ、いえ、そんな…もしあったとしても大したことないから、大丈夫です!」
あったとしてもきっと微熱だし、そんな病人みたいにはならないと思うから慌てて桜井さんを止めた
「念の為。もしあったら今日はちゃんと休むこと。それだけだよ」
「…それなら」
小さく笑って桜井さんは体温計を借りに部屋を出て行った
「…休むこと、か…むしろもっと頑張らないといけないのにな…」
焦っても仕方ないことはわかってる。だけど相馬達が何か今後してくる前に、少しでも坂崎に信用してもらいたい
「でも…坂崎は、俺のこと嫌ってるし…信じるというより相馬達と一緒って思われてるだろうから…どうしよう」
弱気になるとどこまでも落ちていくような気がするからあんまり考えたくない
先生はそんな俺と坂崎の間に入ってくれて教えてくれる
――コンコン
「ごめん高橋君、少し坂崎君の方行ってくるね。はい体温計。戻ってきたら教えて」
「…? 何かあったんですか?」
ドアを開ければ桜井さんが体温計を持ちながらも、真剣な顔をしていた
そして後ろから先生の声も少しだけ聞こえる
…坂崎に何かあったんだ
「っ、えっと…桜井さん?」
俺も行こうとすると桜井さんはドアの前から動かなくて思いっきりぶつかってしまった
「高橋君はここにいて。今君のすることは体温を計ること。戻ってくるまでに暇だったら眠ること。わかった?」
「でも…坂崎、大変なんですよね。俺、何か手伝えることあればって思って…」
「過呼吸になってるだけだし、実はそれもほとんど治まってるんだ。俺はその後に少し坂崎君と話がしたくて行くだけ。だから大丈夫」
「……わかりました」
そう言えばカウンセラーだってことを思い出した
「体温計、ちゃんと使ってね」
桜井さんは今度こそドアを閉めて行った
「……っ」
借りた体温計をサイドテーブルに置いてベッドの下で体育座りをした
「熱なんて、ないし」
認めたくない。桜井さんに気付かれなければきっと今頃坂崎のところに行けたはずだ
桜井さんと坂崎がどういう話をして信じてもらえるのかとかも見たかったのに置いて行かれた気がした
「疲れもないから…大丈夫だから」
坂崎のことを助けたいのは俺も一緒だから
だから、だから…独りにしないで
「…でも、今行けば…俺のわがまま、かな」
拗ねてもどうしようもないことだってわかってる
こんな時にそんなことしたら、迷惑だ
…大人しく寝て待ってよう。桜井さんには後で聞いて、話をしたい
ベッドに入って布団をかける
次起きたら桜井さんが戻ってきてたらいいなと思いながら俺はそっと目を閉じた
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