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19 先生side
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先生side
「っ、げほ、けほ…は…」
「うん。だいぶ落ち着いたかな、けどまだ苦しいと思うからまだ呼吸は続けててね」
本当に小さく頷いたのを見て俺も無意識に息を吐いた
「達也。坂崎君一回寝かせてあげて。だいぶ体力消耗してるし、俺が急に来たのもあって疲れてるだろうから」
「ああ。祐、動くぞ」
ゆっくり立ち上がってなるべく振動が来ないよう祐を部屋まで連れてベッドに横にさせた
「…せ、んせ」
「寝るまでここにいる。明良、高橋はどうだった」
「坂崎君のこと心配で飛び出そうとしてたよ。でも止めてきた」
にこりと笑っているが、思うところがあったんだろう。眉が少し寄っているように見えた
俺も、高橋のことについて一度話をしたかった
自分のことになると随分誤魔化すのが何だか不自然に見えるし、だがそこを補うかのように器用に避ける
「…寝たか」
「俺、もう一回高橋君のところ行ってくるよ。体温計、多分使ってないだろうし」
「わかった。もう少しだけ祐のこと見てから行く。先に待っててくれ」
うん、と頷いた明良は部屋を出た。俺は顔色の悪い祐を見て起こさないよう頭を撫でる
「……俺はお前に少しでも笑っていて欲しい。生きて欲しいんだ。だが、お前も…死にたいと思ってるんだろ」
懐いてくれているのはわかるが、ただそれだけだ
「………どうすればいい」
どうすれば、お前は生きてくれる
どうすれば、生きたいと思ってくれるんだろうか
…しばらくその場から動けなかった
「…悪い、遅くなった」
「ううん。大丈夫?」
「…ああ。それで、高橋はどうだった」
明良に心配をかけさせる訳にはいかないと首を振って深呼吸をする
今は切り替えよう。落ち込むことは後でいくらでも出来ると思うようにして蓋をした
「高橋君は寝てたから起きたら聞くことにしたよ」
そんな俺の切り替えを明良は気付かないフリをしてくれた
「そうか。お茶でも飲みながら話すか」
四人もいるからお茶のボトル減りが早いなと少しだけ零してお互いのコップへと新しく注いだ
「最初は学校の話してたんだけど、先生も良くしてくれてるみたいだし、友達もちゃんといるから人との接し方とかは大丈夫そうだったよ。高橋君もすごく楽しそうに話してくれたし」
「部活も上手くやって、問題もないらしい。だが、明良が気になったのはそこじゃないんだろ?」
「うん。まだ本格的には話してないんだけど、多分すごく不安になってる。ただ坂崎君に信じてもらうってことだけじゃなくてちゃんとその先のことも考えてそうだったよ。ただ、自分がその波に乗れるか、俺たちがいるから自分はいらないんじゃないか…とか、いろいろともしかしたら考えてるかもしれない」
高橋はしっかりしてるが、不安に思うとどうやら一気に自信をなくしてしまうらしい
もしかしたら今だけのことなのかもしれない
祐の状況をそれだけ真剣に考えているが、どうすればいいのか、自分の思いつきだけで動いてはいけないこともわかっていて、不安になっているんだろう
「そうか。明良が来た時点でなんとなくそんな気はした。ずっと部屋にいたのも邪魔になりたくなかったんだろうし、俺達の中に入ってもいいのか祐のこともあって言い出せなかったんだろ。少し、気にはなってたんだ」
影響が強いのも、きっと明良はもう気付いているだろう
祐とまた違った、普通であれば気付かないであろう高橋の繊細さが今回で明らかになった
「あれは、一人にすればするほど自滅していって気付いた時にはもう遅いっていうタイプかも」
「明良」
「ん?」
「…高橋の様子、しばらく見ることは出来そうか?」
俺だけだとやはり二人分見るのは難しい。祐の不安定さもまだ落ち着いてはいない
明良から見た高橋の様子も放っておけない
大変なことを頼んでいることはわかっているが、どうしても明良の協力が欲しかった
「それって、俺もここに入ってもいいってこと?」
目を見開けば、明良はふと微笑む。まだ何も言っていないのに協力的だった
「ああ。俺一人だと…情けないがどっちかは助けられない気がする。面倒を見ろとまでは言わない。たまに様子を見に来てくれるだけでいい」
高橋も、きっとこれから起こるであろう状況に助けてほしいと思うはずだ
そしてきっと誤魔化すだろう。そこを明良に補ってもらいたい
「達也」
「……」
「達也が坂崎君と高橋君の先生なのと保護者だっていう立場なのはわかるよ。でも、さすがに二人分の…しかも特殊な子達を一人で何とかしようとするのはどう考えても荷が重いんじゃない? もし俺が達也の立場だったら遠慮なく達也を引きずり込むけど」
「…荷が重い訳じゃない」
「中学生は多感だよ。それに拗らせる可能性が一番大きい。不登校もいじめも一番起きやすい時期だし、クラスの中で妙な上下関係だって生まれる。恋愛しただけでからかわれてさらし者にされる。坂崎君の状況も良くないのなら、強引なぐらいの勢いがあっても俺は納得するよ」
だから、そんなに申し訳なさそうにしないで
そう言って明良は苦笑しながら俺に言った
「…本当に、いいんだな」
「俺はむしろ心配で通いそうなんだけど」
「二人のことか?」
「それもそうだし、達也のことも心配だよ。その証拠にさっきから見てたらなんか顔色悪く見えるんだよね。疲れてるんじゃない? 忙しい?」
明良が俺の頬をそっと触る。いつも手が冷たいから一瞬肩が跳ねるが、そのままにさせる
「…仕事はそれなりにあるからな。だが病院勤めより全然いい」
「確かに。今日はどうするの、この後」
「…少し、休むか」
そうだねと明良は伸びをする。祐も高橋も寝てるから静かだ、それに部屋も暖かいから眠くなってくる
「明良」
「ん? なに?」
お互い眠ってしまう前に伝えたいことがあった
「ありがとうな」
「ううん。俺も達也に助けられてばかりだったから。帰るときになっても声かけられなかったら俺から言おうかって思ってたくらいだよ。二人が元気になって大人になるのも見てみたいし」
「…俺も、明良には助けられてばかりだよ」
ああ、これで…これなら助けられるかもしれない
明良が協力してくれるだけでこんなにも心強くなる
座布団をお互い枕にして、ほっとした途端に意識は沈んでいった
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