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桜井さんが来てから数日後、怪我も治ったから学校に行くことにした
出席日数が足りなくて卒業が出来なくなるのは嫌だった、いつまでもこの学校になんて居たくない
…中学って留年とか、あるのかな
「あれ坂崎…行くの?」
部屋から出れば高橋が今から学校に行こうとしていたところだった。制服姿を見るのが久しぶりで見慣れない
高橋も僕が制服を着て出てきたことに驚きながらも段々と声が小さくなる
「…出席日数、足りなくなりそうだから」
桜井さんに言われたこれから友達になるかもしれないってことと、先生が前に言ってた気にしてやってくれ、の二つが何だかすごくぐるぐるとしていて会う度に自然と眉が寄った
先生達は…多分、高橋のこと信じてるんだよね
でも…僕はまだ完璧に信じるってことが出来ない
信じたら…怖いから、裏切るかもしれない人を信じたって後々辛いだけ
「大丈夫? きっと相馬達、坂崎の所来るよ。せっかく怪我治ったのに…」
高橋が言うそれはいつも先生にも言われていた
僕だって、本当は行きたくない
相馬君たちがいる狭い教室になんて、本当は…怖くて、いつも体の震えが止まらない
先生には言ったことないけど過呼吸起こして倒れたことだってある
「…それでも、行かないと…僕だって卒業したい。こんなところ、居たくない」
留年して相馬君たちが先に卒業したとしてももうこの寮にいること自体、ずっと相馬君たちがいるんじゃないかって錯覚しそうで…それも地獄のように感じるから
「……先生もそれ知ってるの?」
うんと頷く。先生にはもっと詳しく伝えてる
「…だから、俺なのか」
「…え」
高橋が何か考え込んでいたけど、すぐはっとして困ったように笑う
「いや。何でもない。今日からテスト二週間前で朝練ないからせっかくなら一緒に行かない? 隣歩くんじゃなくて少し距離空けて歩くから」
「……見られたらどうなるかわかんないよ」
「その時は、ちゃんと言う」
少し声が震えてるのがわかって無理してるのもすぐわかった
そういうの、いらないのに
何もその後返事をしないまま、歩き出した僕についてくるようにして歩き出す
会話は特になかった
+++
久しぶりの教室という地獄に自分から足を運んで席に座る
寮を出たのが少し遅めだったから周りの人の声が聞き慣れなくて声が出なくなりそうなくらい怖かった
「おはよう高橋! 大丈夫だったか?」
「…おはよう。うん、一日寝たら治った。もう大丈夫」
「そうっぽいな。良かった良かった」
友達の西田はなんだかんだ高橋のこと見てるし、心配もしている
「はいノート! 途中寝そうになってミミズになってる所あるけどまあ、気にすんな」
「はは、何それ。でもありがとう。今日一日借りていい?」
もちろん、と二人はとても嬉しそうで友達ってこういうものなのかとぼんやり思った
僕にはありえない学校生活
今だってまるで僕がいないかのようになっている
「あーっ! 今日坂崎来てる! 相馬! 今日来てるぜ!」
「まじかよ。やっとかー」
「久しぶりっすね。今日は良い日になりそうだー!」
来た、と誰かの声と共に三人がやってきた
僕は最初は三人を見たけどすぐ目を反らして、必死にバレないよう体が震えるのを抑えていた
「坂崎、久しぶりだな」
「……うん」
返事をしないとすぐ腕を痛いぐらいに捕まれるから頷くと共に小さく声を振り絞る
だけど目は合わせないでずっと下を向いていた
「直接俺のところに来いよ。何もしないクラスの奴なんかより俺の方がいいだろ? 構ってやってんだから少しはこっち向けっての。のこのこ教室来て授業受けてるとか馬鹿通り越してマゾだろ。何も思ってないですみたいな顔しやがって」
「……ひ…っ」
そんなことない
諦めただけで何も思ってないわけじゃない
何も感じてないわけじゃ、ない
「相馬」
凛とした声に呼ばれてないのにも関わらず顔を上げる
僕と相馬君が話してる時に、間にこうして誰かが割り込んでくるのは初めてだった
「あ? 高橋じゃん。昨日早退してたけど大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。もう治った」
坂崎、と右腕を持ち上げられてぴくりと肩が跳ねた
「っ、ぁ…」
「俺、今日から坂崎のこと遠回しに見たりしないって…決めたから」
や、めて…っ、何言ってるの
「…た、かはし」
「全部、無くなったっていい…でも、こうでもしないと…なくならない。いつも、ぐったりして帰って来るんだぞ…っ、本当に死んだら! 責任取れんのかっ!」
「やめてっ、…たかはし、いい。いらないっ、やめて…」
今にも殴りかかりそうなぐらいの気迫に思わず捕まれていた腕からしがみついた
僕なんかの為に…死んだっていい人間なのに、そこまでして怒らないでよ
「何してるんだ!」
はっとして顔を上げれば担任の先生が慌ててこっちに来た
「朝っぱらからやめろ。二人とも、席に着け。ほら、早く!」
「……」
「……っ」
するりとすがみついてた腕は簡単に離れて高橋は僕の顔を一度見てから自分の席に戻っていく
相馬君は少しむすっとしたような顔を隠さないままに席へと向かっていた
高橋が相馬君に刃向かった
そのことが衝撃過ぎて、僕も周りのクラスメイトも呆然としていて誰も話していない
しんとした雰囲気を先生も感じてるみたいだけど、いつも通り出席を取って何事もなかったかのように先生はいつものHRを始めた
…これから、どうなるの
僕だけで良かったのに、どうして…っ
小さく小さく体を縮めてこれから起こることに恐怖を感じていた
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