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あの後、何があったのか覚えてない
だけど一つわかったのは、今日一日相馬君たちに連れて行かれることなく平和に終わったことだった
いつもなら今頃どこかの教室で痛みに耐えてるか保健室で寝てるか寮にいるかのどれかだから変に落ち着かなくて走って帰ってきた
しんと静かな僕の部屋。まだ高橋も帰って来てないから物音も聞こえない。ふらふらとベッドの下に座り込んだ
「……なん、で」
どうして高橋は自分から裏切るようなことしたの
どうして相馬君達に噛みつくようなことしたの
…どうして、僕を助けようって思ったの
「いらないって…言った。なのに、どうして…っ」
体育座りをして顔を埋めれば暗くて少し落ち着いた
そしてやっぱり、高橋と関わらなければよかったとひどく後悔する
――コンコン
「っ」
ぎゅうと体育座りする腕に力が入った
「坂崎? 帰ってる?」
開けるよと言われても僕はそのまま動かなかった。高橋のことが、急にわからなくなった
「おかえり。今から買い出し行ってくるけど夜なにか食べたいのある?」
「……」
首を横に振った
ずっと仲良くしていた人と縁を切ってまで、高橋は僕と一緒にいようとする…それが怖い
「坂崎。俺は全然後悔してないし、むしろ良かったって思ってるよ」
顔上げてと言われてほんの少しだけ上げてすぐ目を見開いた
「…た、かはし…? っ、それ…」
「あーこれ? 大丈夫。西田にちょっと殴られただけ。相馬達じゃないから安心して」
そう言って困ったように笑う高橋の左頬には湿布のようなものが貼られていた
「で、も…っ…ぁ…」
がたがたと震えだした僕に高橋は一瞬びくりとした、でもその後に恐る恐る僕の頭に手を置く
「…ごめん。でも、相馬達にちゃんと言いたかったんだ。俺なりにけじめ、どうしても付けたくて。あの時は…ちょっと怒ってたのもあるけどちゃんと言えた。これからは堂々と坂崎を助けに行ける。そっちの方がよっぽどいい」
「……お、かしい…よ」
だってと付け足しながらゆっくり顔を上げれば高橋は少し悲しそうに、だけど真剣に話を聞いていた
「…そこまでして、なんで…今まで仲良くしてた人と喧嘩…までして僕と一緒がいいの?」
その時初めて随分と掠れた声だと気付いたけど高橋には届いたみたいだった
「坂崎が、いつか笑って学校が楽しいって思ってほしいから」
それにと乗っていた手が滑り落ちるようにだけど確かに撫でた
「ちょっと重いけど、生きて欲しいから」
「……生きる…」
うんと頷いて立ち上がるのを何となく見上げればさっきの真剣な、でも優しそうな表情はもうしてなくていつもの高橋に戻った
「今日の夜はオムライスにするかな。自信ないから調べながら作るとして…坂崎はお風呂お願いしてもいい? 出来なさそうだったら無理しなくていいけど」
「…っ、あ…や、る…できる」
まだ少し体は震えていたけど…動けないほどじゃ、ない
「あー…俺がやるから坂崎は今日はゆっくりしててよ」
「…や、やる」
何かしないと怒られそうでゆっくり立ち上がれば少しふらふらしたけどこれぐらいなら出来ると高橋を見上げた
「大丈夫?」
「…やる」
横を通り過ぎてお風呂場へと向かう
「……」
どんどんこっち側に来てるのがわかって罪悪感でいっぱいだった
僕がいじめられてなかったら高橋はこんなこと考えなくて済んだのに
「坂崎、行ってくる。無理そうだったら遠慮しないでちゃんと休んで。怒ったりしないから」
「…高橋」
「ん?」
やっぱり、僕は…生きていていい人間じゃない
誰かをこうして巻き込んで引き込んでしまう…今日、気付いた
「……なんでも、ない」
「そう? わかった。何かあったら先生に連絡してね」
そう言って高橋は買い出しに行ってしまった
「……いき、て…」
生きて欲しい、その言葉が先生と重なって涙が出た
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