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23 高橋side
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高橋side
「よし、今日はここまでにするか。みんなお疲れ」
先生の一声に終わった…と疲れた声とため息が教室中に響く
テスト二週間前だから部活はなし、でも一週間に一回やっている勉強デーを今日からテスト前日まで行うとミーティングで知らされていた
参加は任意。だけど先生が勉強教えるの上手だと評判があるから、ほとんどが参加している
一年から三年までのほとんどの強化を所々教えてもらいながら勉強をしていた
「はー…終わった。腹減った…」
「……帰るか」
坂崎と先生はどうしてるかな
勉強道具を片付けて急いで帰ろうとすると、後ろから呼ばれて振り向く
「…西田?」
「お前、どうするんだこれから」
「どうするって、なにを?」
なにをってと呆れたように言われてクラスのことかと少し胸が重くなったような感覚になる
「正直、考えてない」
「…考えてないって」
「だって、わからないし。今日見てたら、坂崎にしか興味ないみたいな感じだったから俺がもし助けに行っても相手にされないかもしれない。でも、クラスのみんなは俺を避けるだろうから…」
正直、相馬に殴られるかと思った
割り込みすれば容赦なく殴られるから警戒してたのに何もされずに一日が終わった
坂崎がいるのに、何もなく終わるなんて初めてだった
「……どうだろうな」
「…そうじゃなくても、俺はどっちでもいい」
西田と話す方が、今は辛かった
自分から離れるって決めたのにやっぱり、友達じゃなくなるのが嫌で…苦しい
「これでいいんだよ。俺は坂崎の方に行く、だから…西田とも、これで終わり」
「は? 待て待て、あー…えっと、すげえ勘違いされてるの? 俺」
「…え?」
勘違いする所なんてあったかな
「坂崎の方にいくのは確かにびっくりした。けどさ、その…高橋が何か悪いことするとかそういうことじゃないんだろ? むしろ勇気あんなって、すげえなって俺の方が嬉しくなった」
そうだろと笑う西田に俺は目を見開く
だって…そんな褒められると思ってなかった
絶対西田とはこれで終わりだって…ごめんって面と向かって言おうとしてたのに
…だめだ、なんかぐちゃぐちゃになってきた
「だ、け、ど!」
「いっ!」
「その決断を俺に隠してたのは、いけ好かないなー…俺、びっくり通り越して内心キレてたわけ。知ってる?」
頬をぐいぐいと引っ張られて痛い痛いと言うけど変な声になってしまう
「っし、知ってるよ! 思いっきり殴られたし」
「まあ俺の事情はとりあえずいいや。それで? 一人で決めたのか?」
真剣な顔で聞かれてううんと首を振った
「保健室の石川先生が坂崎の保護者なんだよ。その人に相談して、決めた」
「ふーん…。様子がおかしかったのは、そういうこと」
「そんなにおかしかった?」
「何か考え込んでんなって程度。別にそんな誰でも気付くってほどじゃねーよ」
いつも通りの会話が今でも出来てることに涙が出そうになって笑いながらも俯く
西田は俺のことを見てくれていた
口は悪いけど話せばわかってくれて、無理矢理に聞いてくることもしない
坂崎のことは何となくわかってたんじゃないかとさえ思うほどで、だけどそれでも深くは聞いてこなかった優しさに俺はいつも…今でも甘えてる
「…っ、ごめん、西田…ありがと…っ」
「おおおい!? あ、えっと…とりあえず、今泣くのはやめろ。俺が泣かせたみたいになるから、ほら後輩見てるから!」
じと目で見られてるらしく、西田は俺を引っ張って寮まで一気に走り出す
その後ろ姿が大きくて俺はまたそっと涙を流した
「そろそろ泣き止んでくれよー。坂崎が気にするだろ?」
「…まだ、俺は信頼されてないから気にならないよ」
「そんなことないって言いたいところだけど、まあ無理もないか。ずっと見て見ぬフリしてたしな。あ…」
何かに気付いたのかさっき引っ張られた頬へと手が伸びる
「ごめん、まだ腫れ引いてないんだな。痛かっただろ」
「いいんだよ。俺は今でもこうして話せるのが、嬉しいから」
西田が俺を殴ったのは昨日。無言で殴られたから本当に友達終わったんだと顔も胸も痛くなってたのに、今日行けば普通に俺に話しかけてくれた
本人曰く、さっきも言ってたけどびっくりを通り越してキレてたらしい
「高橋が俺に何も相談しなかった罰ってことで。今度、詳しく聞かせてな」
わかったと言えば西田は軽い足取りで自分の部屋へと帰っていった
「あれ…今度…?」
なんとなく頬に触ればピリッとした痛み
「今度があるって…こと? っ、もう、本当…っ」
俺は…馬鹿だな。こんな友達を手放そうとしてたんだから
部屋に入ればどっと疲れが来て体が重くなる
でもクラスの人とももう無理に仲良くしなくていいって思うと少し気が楽だった
教室に入った瞬間の重い空気と一人をターゲットにしているクラスに多分無意識に沈んでいたんだと思う
「もう、終わった。大丈夫。坂崎とこれからは一緒だし」
西田も、多分いてくれる
それにこれからがまだあるのが信じられないほど嬉しい
喧嘩じゃなかったことも含めて坂崎を呼ぼうと部屋をノックした
なんだか気にしてたみたいだったから
「…あれ、坂崎?」
いつもなら小さいけど声が聞こえるか、物音が聞こえるんだけど何も聞こえない
寝てるのかと思いつつ中で倒れてたらまずいしなと一応入るよー、と声をかけて入ることにした
「え」
むせ返るほどの血の匂いとそこに倒れる坂崎
カーペットに結構な量の赤い、あか、い
「っ! 坂崎っ!!」
駆け寄って揺すってもぐったりして顔も真っ白だった
なんで、どうして…あ、どう、しよう…どうすれば…っ
――ピリリリリ…
「っ!?」
はっとしてベットに向かえば坂崎の携帯が鳴って『先生』と表示されていたからきっと石川先生だろうと慌てて通話ボタンを押して叫んだ
『坂崎、今日学校どう「先生!!」』
届いて、今ので…お願い、と携帯を握りしめる
『高橋か、どうした』
「坂崎が! どうしよう先生…っ、たおれて、うごかないんだ…」
早くしないと…早く、でも、こういうときどうすればいいのか、考えられない
『落ち着け高橋、大丈夫だ。今そっち向かってるから』
気持ち悪くなるくらいの血の臭いに口を抑える
体も震えて、涙が出てきた
さっきみたいな嬉し涙なんかじゃない、役に立てない悔しさと怖さの涙
「…せんせ、早くっ」
『もう少しだ、っと着いたから開けるぞ』
ガチャリとすぐ音がしてドタドタと足音が聞こえて振り返る
ゴトリと携帯を落とせば先生と目が合った
「せ、んせ…っ、さかざき、が…」
先生もこの光景を見て目を見開いて少し固まっていたけど、すぐ首を振って俺の肩に手を乗せる
「高橋、救急車呼んでくれるか。俺は傷の手当てを先に済ませる」
「わ、かった…」
落とした携帯を拾い上げて番号を押すだけなのに情けないほど手が震える
でもやらなきゃ、そう思っていても上手くボタンが押せなくて焦ってしまう
「落ち着け、大丈夫だ」
先生と一緒に深呼吸をすると震えは少し落ち着いた
その後なんとか救急車を呼ぶことが出来て、先生だけ乗り込んだ
俺はその後何もする気分になれなくて、ベッドで一人暗くて怖い夜を過ごしていた
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