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27 高橋side
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高橋side
「高橋君、一回戻ろう」
「……」
三階のトイレで気分の悪さと戦っていたら桜井さんが来た
大丈夫ですと言いたかったけど口を開けるほど元気じゃなくて、首を振ることしか出来なかった
「もう少し高橋君が元気になったら来よう。車、戻って休まないと」
坂崎はどうなったのか、せめて聞きたくて服の裾を掴んで目をじっと見つめた
「もしかして坂崎君のこと、かな。大丈夫だったよ。病院が苦手みたいで少し取り乱してたけどそれも達也がいれば少し落ち着くはず」
良かった、と力を抜けば桜井さんに支えられて一階のロビーまで移動した
本当は一目見たかったけど気持ち悪さが邪魔をするようにここ何日も続いている
もう血の臭いもしないのに
「達也に連絡してくるね。寄りかかっててもいいよ」
頷いて桜井さんに寄りかかる
いろいろ考えることはあるはずなのに、ぼーっとして考えられない
ただ…悲しかった
だけど見つけたとき以来、涙は出なくなった
「昼ご飯まで見たいって言ってたからそれが終わったらこっち戻ってくるって。そしたらご飯でも食べに行こうか」
それまで休もう、と手を取られて今度は車まで向かった
+++
「達也おかえり。坂崎君あれからどうだった?」
車に先生が戻ってきた音で目が覚めた
「栄養補給はしばらく栄養剤使うらしい。取り乱してたのもしばらく一緒にいたら落ち着いた。看護師がこれからは定期的に様子を見に行くと言っていたから多分大丈夫だろう」
「病院で一人は辛いだろうから寝る前にもう一回行った方がいいかも。今の坂崎君は夜を過ごすのも苦痛だと思うから」
「わかった。面会時間の間に行ってくる」
エンジンをかけた先生を見ていたら大丈夫か、とバックミラーで目が合った
「…大丈夫、です。寝れたので」
「みたいだな。顔色、良くなってる。だがまだ無理するなよ」
「はい。先生も」
動き出した車に俺は病院を窓からずっと追っていた
「高橋、お腹空いてるか?」
はっとなって先生の方を向けば二人とも不思議そうに見ていた
「…えっと、正直あまり」
そう、いつもなら五時くらいに自然にお腹が空くはずなんだけど全然空いてなかった
「近くのファミレスとかでいいんじゃない?」
「だな。そうしよう」
「……」
軽く、でもいいかな
ご飯って聞いて少し気分が悪くなってきた
車酔いかと思って深呼吸をする
「大丈夫?」
「っ、はい…あの、軽くでも…いいですか」
「もちろん。気が滅入ってるときは量食べることを考えない方がいいよ。それだけで気分悪くなっちゃうから」
いつもの量を食べさせられるのかと思ってたけど…良かった
「残したら俺が食べる」
「俺もそうする、高橋君は自分のこと考えてね」
「…はい」
桜井さんの言葉通り、すぐ近くのファミレスに入った
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