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目が覚めたら桜井さんと高橋がいた
ごそごそと体を動かしてみれば昨日より動けるようになってる気がして起き上がろうとすると桜井さんが手伝ってくれた
高橋は僕が起きたことにびっくりしているのか良かったと言いながら泣きそうに、でも嬉しそう…に見える
…僕なんかにこうしてくれる人、なんて…いないはずなのに
だから、必要とされてなくて迷惑ばかりかけてる
だから、学校なんて行ってもあんな毎日でどうしようも出来なくて
だから、だから…死にたい、のに
「坂崎君?」
はっとして桜井さんを見上げようとした時、腕に刺さってる点滴の管が見えた
…ま、まだ…病院に、いるの…?
「…にたい、やだ、ここ…っ」
認めてしまったらもう、怖くて仕方なかった
桜井さんがいるから少しだけ怖くなくなってきたけどまだ先生より安心出来なくてがたがたと震えてしまう
「坂崎君。大丈夫だよ、今達也に連絡したから来てくれる」
「…ぅ、う…」
「もし良かったら昨日行った中庭、もう一回行ってみようか。どうする?」
昨日行った中庭、桜井さんとたくさん話した場所
頭も涙もぐちゃぐちゃでわからないけど、昨日の綺麗な場所なら行きたいと思って必死に頷くと手を引かれた
…そういえば、高橋はどこに行ったんだろう
「はい、到着。今日も天気良いね。遊んでる人も昨日より多いんじゃないかな」
「…あそんでる、ひと」
昨日と同じ場所、同じ椅子に座ってぐしぐしと目を擦った
「目、赤くなっちゃうよ」
頭を撫でられて、手を下ろす
突然賑やかな声が聞こえてふと外を見るとどうやらサッカーをしてるみたいで、ボールが備え付けのゴールに入ったのが見えた
…楽しそうだと思った
僕はあの人達と何が違うんだろう、どうして…こんなに僕は何も出来ないんだろう
「そんな坂崎君に一つ、お話があります。説教とかじゃないから安心してね。ただのおとぎ話」
「おとぎ、ばなし」
うんと頷いた桜井さんが話すおとぎ話はとても不思議だった
「一匹の子猫が部屋で丸まって眠っていました。この子の見る夢はいつもご主人様と遊んだり眠ったりするものでした」
とても幸せだったその子猫は、ご主人様を事故で亡くしてしまいました
いつまでも帰ってこなくて寂しそうに鳴いていた子猫をご主人様の弟さんが引き取りました
だけど子猫はご主人様に似ているとはいえ、なかなか懐きません
遊んでいても、お友達も呼んでわいわい楽しくパーティをしてみんなに可愛いと言われていても子猫は何だか怖がっていて、段々と心配になってきました
「坂崎君はこの子猫のこと、どう思う? 今の段階じゃまだわからないことが多いけど」
「…こねこが、かわいそう、です」
「…どうして?」
「ご主人様と多分一緒にいたかったのに…にんげんの都合でわからないままに引き取られて、何がしたいのか…わからないから、怖がってるんだと、思います」
…何だか僕と似ているように感じた
先生とはお父さんが生きてるときにも何回か会ったことはあったけど、あまり話はしてなかった
「じゃあその子猫が幸せになるにはどうしてあげたらいいかな」
幸せ…になるには?
幸せって、何だろう
「………わかりません、僕も…しあわせ、わからないので。大事にしてたら…いい、ですか?」
「大事に、ね」
桜井さんは少し悲しそうに笑いながらありがとうと応えた
「このお話の続きはまた今度にしようか。外、見よう。達也、もう少しで着くみたいだから今のうちだよ」
「…はい」
子猫のしあわせはなんだろう
でも僕みたいに生きていても仕方がないと思われてないみたいだからきっと幸せになれる
「いいな…」
誰かに必要と、されてみたい
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