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退院すると決まってからご飯が出るようになった
先生だけ残ってくれて高橋と桜井さんはお昼を食べに行った
「無理するなよ」
「…うん」
食べてる間は何も話さないけど、いつも先生は僕を見て少し嬉しそうにしてる…気がする
「美味いか?」
「…うん。味、薄めも好き。でも…こんにゃくだけは嫌い」
「はは。ここにでかいこんにゃくあるしな。食感が嫌だったか?」
「うん。他は美味しいんだけど…」
ご馳走様、と手を合わせれば先生が下げに行ってくれた
「祐、学校は今後どうするつもりなんだ?」
「………卒業は、したい…でも…」
先生の顔を見ると怒ってるような、苦しそうな顔をしている。何か考えてるのかな…
「これは退院してからでもいいか。俺も考えてることがあるんだ、また改めて話す」
「…わかった」
病院なのに先生とちゃんと話せるのが嬉しい
言葉にしなくても先生も医者だから僕がきっと元気なのもわかってると思うけど…
「お待たせ。坂崎君はお昼食べれた?」
「…はい。美味しかったです」
「椎茸以外はな」
「っ、せ、せんせ…」
「ふふ、そっか。坂崎君は椎茸が苦手なんだねー。良いこと知ったなー」
なんだか気恥ずかしくて、ふと高橋の方を見ると少し困ったように笑っていた
「達也お昼食べてきなよ。俺達ここで待ってるから」
「悪い、行ってくる」
「坂崎君他に嫌いなものある?」
「…な、ないです」
先生がいなくなるとまだ少し怖くて手が震えてくる
そんな僕を桜井さんが大丈夫大丈夫と頭を撫でてくれて、話をしながら待っていた
+++
「寮に帰って来ましたー」
「…良かった、です」
そうだねと見慣れた寮に帰って来れた
玄関に入って共同ルームを見ると、一週間ぐらいしか経っていないのになんだか懐かしく感じた
「坂崎君はしばらく達也と一緒にいてね。まだ夜は怖いと思うから」
「…はい」
「高橋、どうした」
玄関にいつまでもいる高橋に先生が呼ぶと、はっとして何でもないですと小走りでこっちに来た
「んー、なんだか疲れたね」
「だな。それなら早速祐の部屋で寝かせてもらおうか」
「…うん」
荷物を持って自分の部屋に入ると何もなかったかのように綺麗になっていた
「……っ」
でも、自分のしたこととあの時思った気持ちは今でも覚えてる
「寝るの、怖いか」
「…怖くない。でも」
でも、やっぱりここでしたことは…間違ってないんじゃないかとどこか思ってる自分がいた
「先生」
「なんだ」
「…っ、先生は今でも僕に生きて欲しいって…思ってる?」
もし違うのならまた同じ事をしてもいいんじゃないかな
今度こそ…確実に
「当たり前だろ。俺は昔から祐と一緒に生きたいんだ」
「……っ」
ぽすんと二人でベッドに座ると先生は僕を見ながら嬉しそうに話をする
「ああ。大きくなったお前とたくさんしたいことがあるんだ。成人したら酒だって飲みたいし、旅行だってしたい」
大きくなった僕、大人になった僕
将来のことなんて、考えたことなかった
それなのに先生は大きくなった僕としたいことをたくさん話してくれる
「きっと大きくなったら砂奈さんに似るな。もちろん、裕樹にも」
「…っ、いいの」
「ん? 何が?」
「似たら、先生は…悲しくなるんじゃ」
父さんと友達だって言ってて、僕が似てきたら…悲しくなるに決まってる
会いたくなるはずだよ
「悲しくなるものか。それよりお前がこうして生きてるだけで俺は十分嬉しい。唯一の二人の形見だからな」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でて少し強めに抱きしめられる
「ずっと辛い思いさせて悪い。今度は、祐が幸せになる番だ」
先生の言葉に、視界が滲んでくる
ずっとずっと死ななきゃって思ってた
でも、本当は
「…っ」
こんな生活を願ってもいたんだ
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