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38 先生side
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先生side
「俺は保健室の先生をしている石川達也と言います」
「俺はこちらの中学校とは部外者なんですが、石川先生の友人でヘルプに来ている桜井明良と言います。カウンセラーをしています」
高橋の母、奈津香さんは俺達の自己紹介を聞くとさっきの息子を見る目ではなくなった
話を真剣に聞こうとする大人と母の顔をしていた
「そんなに緊張しないで下さい。むしろ高橋君に俺達助けられてるんです」
「え…? 蒼太が、ですか?」
「はい。本来俺達は高橋君の隣にいた、坂崎祐という生徒をサポートするためにここにいるんです」
明良の言葉に同意をしながら、高橋がいじめられてるわけではないことを説明するとわかりやすくほっとしたように力を抜いた
…やっぱり、親は子供がいじめられてると思いたくないよな
「お母様が思っている通り、坂崎はいじめを受けています。ここまで過干渉なのは俺が坂崎の保護者だからです。桜井には友人という意味とカウンセラーとして個人的な頼みで来てもらっています」
「はい。ですが俺が来る前に高橋君がそんな坂崎君を助けたいと自ら石川先生にお話しに来たそうです。とても強い子ですよね、きっと高橋君なりに気になっていた所があったんだと思います」
「…そう、だったんですね。あの子…全然説明してくれないから、もしかしたらって思っていたんです。だから居ても経っても居られなくて、つい来てしまって…すみません」
高橋のメールだと説明不足だったってことなんだな。まあ、いじめのことはそう簡単に親には言えないだろう
変に言って高橋がいじめられてると勘違いされる可能性だって十分ある
どちらにせよ、こうして面と向かって話せたことに俺も安心していた
「心配しない親はいませんから。お忙しい中、来て頂いてありがとうございます」
二人で頭を下げれば奈津香さんもお辞儀をしてくれた
「あの、差し出がましいのですが…一つお願いしてもいいでしょうか」
「はい。俺達に出来ることなら」
「…どうか、うちの息子の面倒を見てもらえませんか」
隣で明良が息を呑む音がした
「理由を聞いてもいいですか」
「はい。今、私も旦那もシンガポールで仕事をしています。朝から晩までほぼ一日いない状態が続いているのです。そんな中、息子をこちらに連れて来ても寂しい思いをさせてしまう。海外に来て新しく友達を作らせようにも英語がままならないので、悪く言うといじめられるかもしれません。そうなるぐらいなら、日本に残したいのです」
「…いきなり一人暮らしさせるよりは、俺達と一緒に住んでもらってある程度自立するまで面倒を見て欲しい、ということですか」
…明良が静かに怒ってる気がする。何かに触れたな
「…はい。すみません、どうかお願いします…」
「お母様は今日のように日本に帰って来られる日はありますか」
「…今のところ目処は立ってません。ですが、時々は帰って来たいと思っています」
「達也」
ふと呼ばれて顔を見れば、明良は頷いていた
「わかりました。ただ、やはり寂しい時はあると思いますので連絡が来たらちゃんと返してあげて下さい」
はい、と申し訳なさそうにしながら頷いて俺達は立ち上がる
「今、二人を呼んできます。どうぞご自由にして下さい」
高橋の部屋から出て、二人を呼んだ
「母さんが呼んでるぞ。二人とも行ってこい」
「…で、でも…僕は、行ったらダメなんじゃ…」
「大丈夫だ。もし気まずければ失礼しますと言って出てくれば良い。高橋も、積もる話はあるだろ」
「…とりあえずメールの話、する」
行きにくそうにする二人の背を押して部屋に入るのを見守ったあと、明良の方を向けばソファで難しそうな顔をしていた
「明良」
「…高橋君が特殊な理由がわかった。こういうことだったんだね」
「あまり責めてやるなよ。海外の仕事はそんなもんだろう。本当は、むしろ心配で息子も連れていくだろうがな」
「二人、大丈夫かな」
あんまりすっきりしない話し合いではあった
俺達としては高校になっても高橋と関われるのであれば嬉しいが、本人がどうするのか改めて聞いておかないといけない
それも含めて俺の考えていたこともきちんと話さないとな
「よし、今日は四人で雑魚寝するか」
「いいね。いろんな話、出来るといいな」
これからは俺達四人で歩んでいくのなら、親睦を深めていきたい
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