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テストが終わって結果もすぐ帰って来た
合計点、僕は六百点中四百九十点。高橋は四百点だった
あまり勉強する時間がなかったんだけどそれでもここまで取れて嬉しかった
…桜井さんに後でお礼言わなきゃな
「祐」
ふと先生に呼ばれてテストから離れる
「引っ越す前に墓参り行くか」
「…父さんと母さんの?」
「ああ。ちゃんと挨拶してこい。いろいろ話すことあるだろ」
「……」
話すこと…あるのかな。聞いてくれるのかもわからないのに
「…二人は知ってる? 僕の両親が…いないこと」
「ああ。悪いが既に話してある」
「あ、ううん。むしろ…話してくれてありがとう。話せる自信なかった、から」
そうだったんだ、いつ知ったんだろう。でも…特に何も二人からは深く聞かれてない
「祐にとってここは生まれて育った場所だから、と俺も最初は引っ越すまでしない方がいいかと思ってたんだが明良がせっかくなら一から出来る場所の方がいいと言ったんだ。今回はその言葉に甘えた」
それで、ずっと考えてたんだ
コーヒーに口を付けるのをじっと見ていると空いた手で撫でてくれる、これが毎日見れるのかなと思うと少し嬉しかったりするけどまだ恥ずかしくて言えない
大人の人、やっぱりかっこいいけど…僕はきっとこんな大人にはなれないし、これからがやっぱり怖い
「高橋が帰ってきたら行こうか。いつ帰って来るか聞いてないが、その内帰ってくるだろ」
「…うん」
高橋はいまだ友達の方に行ってて、桜井さんは少し用事があるらしく午後から来るみたいだった
+++
「それって俺たちも行っていいの?」
桜井さんが困ったように、高橋は何も言ってないけど悲しそうな顔をしていた
「…はい」
ここから遠くて、中学になってから一度も行けていなかった
僕のせいだってお墓の前で言われてる気がして…今でも本当はそう思っていて、少し怖い
「今から行くか?」
「…うん」
あまり覚えていないけどすごく嬉しいこともあったから父さんが全部悪いわけじゃない
母さんのこと本当に好きだったから、悲しかったんだ
…そこだけははっきりと覚えてる
桜井さんの車に乗って両親のお墓へと向かった
「ここって…森?」
着いた場所はどこかの森のような場所。山奥ではないんだけど田舎のような雰囲気はあって木や草の隙間からの日差しがとても綺麗だった
「でもなんだかいいところだね」
「…はい。僕もここに来るの、好きです」
先生と僕が先を歩いて高橋と桜井さんがその後ろを歩く
ここからそんなに遠くないけど、体力がまだちゃんと戻ってない僕は着いた頃にはだいぶ疲れていた
「は、はぁ…そんなに遠くないのに結構疲れる…っ」
「緩やかな坂道になってるみたいだね。少し休憩してからお墓探そうか」
高橋も疲れてるみたいで膝に手をついて息を整えている
…そういえばご飯、食べられないみたいだからそれのせいなのかな
「もう一仕事あるからな。少し休むか」
「…僕が探す」
「祐…」
「草の方は、手伝ってほしい…から見つけたら僕も休む」
少し周りを歩けばすぐ板状のお墓は見つかった
全然来てなかったからだいぶ草で埋まりそうになっていて、それが僕を責めてるようにも見えた
「ここ、です」
「坂崎、俺もう動けるからやっちゃおう。みんなでやればすぐ終わるし」
「…わかった」
ぶち、と先生が草を抜いてくれていたのに続いて僕も素手で雑草を抜くと二人も手伝ってくれた
「砂奈さん、と裕樹さん…であってる?」
やっと周りも見えるぐらいにまで綺麗になると四人でお墓を囲う
「…はい。お父さんの裕とお母さんの砂で、僕の祐らしいです」
まだ小さかったからどうしてだとかちゃんとした理由はわからないままだったけど、二人の子供っていうのはわかるから名前は気に入ってる
「優しい、人なんだね」
「本当にいい親だったんだよ。な?」
「…うん、もうあまり思い出せないけど…」
ずっと昔だから、そう言えば先生は辛そうな顔をして頭を撫でた
それに、僕が壊してしまった家族だから
そう思うと自分の名前を好きになれる日は来ないなとそっと手を合わせ、目を閉じた
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