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51 高橋side
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高橋side
怪我も風邪も良くなった頃、引っ越しの準備が本格的に始まった
ほとんど家具は備え付きのもので俺も坂崎も物は少ないから転校する手続きが終わり次第、先生が伝えてくれるみたい
それより先生や桜井さんの方が忙しそう。家は決まったみたいだけどこの後の掃除とかは俺達も駆り出される予定になってる
二人は仕事もあるから平日は仕事で終わったら家で片付けの日々
俺達はその間二人でいることが多かった
「坂崎はもう荷物なんとなくまとめてる?」
「…使ってないものだけ、まとめてる」
西田のことと、閉じ込められた後のことを話した後から坂崎は俺の質問に返してくれることが多くなった
前は警戒して黙り込んでいたり、曖昧に頷いたりだったから嬉しい
「俺もそうするかな。普段使う物以外はいいよね」
もう少しで寝る時間だけどすぐ終わるだろうと部屋に向かおうとすれば何かに引っ張られる感覚がして振り返る
「坂崎? どうしたの」
下を向きながらも俺の服を握っていた。普段先生にすることを俺にするなんて、と思いながらも覗き込む
「…引っ越ししたら、高橋と西田はどうするの」
「会って遊びたいなとは思ってるけど引っ越しの場所によっては夏休みとか冬休みとかしか遊びに行けない気がするんだよなー。連絡はするよ、もちろん」
「…そう。良かった」
ほっとしたような表情になって服を離す。坂崎はどうやら俺と西田のことが気がかりらしく、たまに聞かれては答えてる
「そう言えば俺達って友達、なのかな」
「…わかんない」
俺達ってこう曖昧な感じになるとお互い不安になることがわかった
桜井さん曰く、お互いに自信がないからだねって言われて図星だと苦笑いしたのを思い出す
「今はそうじゃなくてもいつかなれたらいいね。先に家族になるけど」
「…家族?」
「あれ、俺ずっとそう思ってたよ。先生と桜井さんは大人で二人だし、俺と坂崎は子供だし。血はみんな繋がってないけどさ」
家族、とぼんやり呟く坂崎に違ったかと少し焦っているとふと小さくだけど坂崎が笑った
え、笑った…?
「笑った!?」
「っ、な、なに…?」
お互いにびっくりして固まったけど、すぐ謝った。坂崎もううんと首を振って部屋に戻るのか歩き出した
…本当に小さくだけど、笑った
動揺しすぎて坂崎は多分逃げた。いやだってこれ驚かない方がおかしいだろ…不意打ちすぎた
「…綺麗、だったな」
やっぱり笑ってた方が絶対いい
これから、坂崎が良い方向に変わっていけたらいいけど…どんな風に明るくなるのか楽しみだ
+++
「…だよな。他の先生方にも一応口止めしてもらう協力はしてる。正直に言うと教育委員会なんだろうが、俺達が離れる行動を取ったから言わないままになるだろうな」
「…あれ、先生達。お疲れ様です」
風呂から上がると先生と桜井さんがいた。それに二人とも真剣に何かを話していて本当は話しかけるべきじゃなかったんだけど挨拶しなきゃと思って声をかけた
「あ、お疲れ高橋君。急にごめんね」
「いえ、今日は二人とも泊まるんですか?」
「そうしたいんだけどちょっと顔見に来ただけなんだ。もっと一緒にいたいんだけど」
そう言ってくれるけど二人は疲れた顔をしていた。俺も何か出来たらと思うんだけど学校からあまり離れられないから今は何も出来ずにいる
「坂崎君は寝てたから、そのままにしてあげてね」
「はい」
「高橋、クラスメイトの誰かに転校すること言ったか?」
「西田にはもう伝えてあります。他は言ってません」
どうしたんだろう…難しい顔をしてる。聞いた方がいい話かなと近くまで行くと先生はそのまま聞く
「あー…あの時はあまり話は出来なかったな…。その西田は他の奴に言いふらしそうか?」
きっと助けに来てくれたことを思い出してるんだろうな
西田、先生とか大人にはあまり自分から用がない限り話しかけたりも一切しないから、先生にも同じようにしてたみたい
「…クラスの友達の何人かには言いそう、ですけど相馬達には言わないと思います。何かあったんですか?」
「なるべくなら相馬君達が知らないまま転校したいんだよね。知ったらきっと坂崎君にもっと攻撃的になるかもしれないから」
「一応、西田に連絡しておきます」
「悪い」
確かに逃げるようなものだから相馬達は怒るかもしれない
メールで西田に転校することと場所はクラスのみんなには教えないで欲しいと言うと一言すぐ返事が来た
「わかってる、だそうです」
「多分、同じこと考えてたんじゃないかな」
ですかねと笑うとはっとして先生達に身を乗り出す。そうそう、さっきのこと言わないと
「あの! 坂崎、俺と話してるとき本当に小さくだったんですけど笑ってくれたんです!」
「へえ。嬉しいね」
「ああ。良かったな」
二人はそんな俺の反応に同じく笑ってくれた。あれは本当に嬉しかったんだ。笑ってくれたらいいなと考えてたときはこんなにすぐだとは思ってなかったし
その後も少しだけ話をして先生達を見送った。俺も寝る準備をして、一回だけ坂崎の部屋に入ったらまだ眠っていたからそのままにドアを閉める
笑う回数も、これから増えるといいな
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