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今日は日曜日、桜井さんの家のお手伝いの日…なんだけど
「蒼太君、敬語戻ってるよ」
「あ…っ、え…えっと、こっちの方は終わって…終わった?」
「ふふ。ううん、まだだけど先に祐君の方手伝ってあげてくれる?」
「っ、う…」
僕と高橋はこの敬語なしと名前呼びで片付けがなかなか進まなかった
名前で呼ばれる度に肩が跳ねるし、敬語がないとどう話していいのかわからなくなってしまう
昨日先生の家での手伝いは片付けしながらも僕にとってはたくさん話をした
だけど今は僕も高橋も無言。桜井さんはそんな僕たちを見ても無理に話しかけたりはしないでいてくれる
高橋はさっきみたく必要なことだけ聞いているけど…僕はまだ、時間がかかるかも
そんな桜井さんの家はとても綺麗だった
先生の家は本がたくさんあってまるで小さな図書室みたいだったけど桜井さんはあの家具屋さんで見るようなシンプルで日の光がほどよく入った落ち着く部屋だった
もったいないなと思うけどこれも僕たちが引っ越すから、なんだよね
「…えっと、祐。これ保留のやつ?」
「あ、え…と、うん。こっちはゴミ」
今は居間にある小物と掃除をしていて高橋は反対側の方をやってくれるみたい
新しくゴミ袋と段ボールを持ってごそごそと移動していた
そんな高橋は最近掃除をしてると埃で噎せるみたいでマスクをつけていた
それを見習ってみんなも、僕も付けている
「ふう。キッチンの方は終わりかな。二人ともありがとうね、だいぶスッキリしてきた」
ぐるりと改めて見渡す桜井さんは嬉しそうだった
やっぱり一人よりはずっと早いからだと思う
「少し休憩しようか。飲み物あるよ、何がいい?」
リンゴジュースとお茶のペットボトルを掲げて、僕たちはリンゴジュースを選んだ
「これ美味しいよね。この会社のリンゴジュースいつも買っちゃうんだ」
「俺もいつも買えたらこれ買いたいくらい好きです」
「…美味しそう、だったから」
うんうん、と頷いてわかってくれるのは嬉しかった
口を開いても誰も何も答えてくれないことが多かったから
「じゃあ引っ越した後もこれは買い続けようか。消費が一番多そうだ」
「先生も飲みそうですか?」
「達也は…祐君の方が詳しいんじゃないかな。どう?」
「あ…多分、飲む」
正直飲んだところは見たことないけど、先生も飲む気がする
「意外と子供っぽいところあるし、嫌いだとしてもこのこと話したら飲みそうなんだよなー」
「へえ。意外」
コーヒーを飲んでることが多いけど、先生は意外と寂しがりな所もある
高橋はまだ知らないみたい
「固く見られがちだし、あれは性格だからね。でも優しい所もあるから学校の保健室の先生やってるし、合ってるんだと本人も感じてるんじゃないかな。子供好きなんだろうな」
「…確かに、俺も相談したりしてました。このことについて、ですけど」
「不器用なのもあるんだけどね」
「…先生は、優しいよ」
僕のこと引き取ってくれた。怖いところから出してくれて助けて欲しいときにずっとそばにいてくれて…恩人のような人
「うん。達也は優しい。俺も学生の頃はたくさん助けてもらってたから、二人と一緒だね」
「……」
桜井さんのこと…あまり聞かないからもっと詳しく聞きたい
だけど今は引っ越しの片付けが先だからとリンゴジュースを飲み終えて二時間ぐらい掃除して、寮へと帰った
「ま、それも慣れだな。まずは敬語だけでいいから挑戦ってことで」
「まさか先生も明良さんと同じだった…」
敬語なしと名前呼びを先生なら止めてくれるのではと思っていたんだけど先生も賛成してた
…やっぱり慣れていくしかないみたい、出来るのかな
そして先生達は今日泊まるらしい。引っ越しの片付けをそのままにして寝るのは確かに居心地悪そう…
僕たちはずるずると布団を引っ張ってきて広げていく
お互いの部屋でのベッドは先生達の前では使わなくなって、代わりに敷き布団を集めて雑魚寝することが多くなった
「明日も早いからな。おやすみ」
端に寝転んだ先生に僕も寝ようと隣に横になる。先生と一緒なのがやっぱり落ち着く
「俺はこっちにしよう。蒼太君もおいで」
左端から桜井さん、高橋、先生、僕の順。いつも変わるけどこの順番が一番多い気がした
「じゃ電気消すよ」
パチッと電気が消えて真っ暗になる。少し怖くて先生にしがみつくと頭を撫でてくれた
「わ、桜井さんっ」
離してくださいと後ろから聞こえて、どうしたのか見たら桜井さんが高橋を後ろから抱きしめて眠ろうとしていた
「蒼太君あったかいからね。おやすみ」
「お、やすみなさい…」
ぼんやりと少し起き上がって見ていたら先生に軽く引っ張られてそのまま抱きしめられる
「わ、先生…?」
顔を上げたらものすごく近くて慌てて目を反らした。先生は目を閉じていて今にも寝てしまいそう
「…いいだろ、あったかいし」
すぅ、と寝息が聞こえてきて僕も目を閉じる
「おやすみなさい」
次起きたらみんながいる。独りじゃない、家族になれる
ずっとずっと無くしたくないなとしがみつく力を強くして僕も眠った
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