アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
55
-
学校や寮の手続きも先生方がやってくれて僕たちは今必要な物が入った段ボールを先生の車に運んだ
僕たちの荷物だけだから段ボールは一人二つだけ。でもその分先生たちの段ボールが多いみたい
「意外と重かった…。祐ごめん、さっき大丈夫?」
高橋と行き違いで運んでいたら段ボールをぶつけてその振動が僕にも伝わって首が痛くなったのを見られた
「…大丈夫」
「二人ともお疲れ、俺たちも終わったよ。今達也が部屋に残ってるものないか確認しに行ってるから、先に車乗って待ってようか」
「はい」
寮から駐車場までは意外と遠い
でもそれも今日で終わりだ
「…坂崎?」
「っ、え…?」
誰かに呼ばれた気がして振り向くと、いないはずの人がいて固まった
「…そ、うまくん…」
「え、は? 誰…? 高橋もいるし、どこ行くんだよ」
ここにいないはずの相馬君が、桜井さんを見て僕たちを見る
授業受けてると思ってたから高橋もびっくりしていた
「どこでもいいだろ」
「っ、良くねえよ! まさかどっかに逃げんのか? 坂崎、答えろよ」
ズカズカと僕の方に近付いてきて、体が震えてくる
その顔も威圧感も…殴るのも、全部が怖い
「やめろ、近付くな。もう相馬には関係ない」
「関係ない? お前の方が関係ないだろ、高橋」
僕の前に高橋が来てくれて少しほっとする
隣には桜井さんがいつの間にかいて背中を撫でてくれた
「俺はあるよ。ずっと坂崎と一緒にいるって決めたから。もう無関係じゃない」
…一緒にいてくれる。嬉しかった、あんなに最初は嫌で信じられなかったのに
「おーい坂崎、お前は俺がいないとダメだろ? コイツなんかよりよっぽどお前のこと見てるし、知ってる」
「…行こうか、二人とも」
突然、桜井さんの声が響いて僕も高橋もはっとして見上げる
「達也が来て、この状況だったら学校の騒ぎになっちゃうから」
「…はい。行こう、祐」
「うん」
そうだよ、もう…ここには来ない
相馬君ともこれで会わなくていい、全部終わりなんだ
「っ、行かせない! お前はここに残らないとダメなんだ!!」
「…もう転校の手続きは終わってるから、どっちにしても俺達はここから出ないといけないんだよね」
僕たちが行く方向に相馬君が塞ぐように立つけど、桜井さんは何も関係がないみたいに進む
「それに、君の自己満足で祐君を自分の物にするのはどうかと思うよ。そんなに傍にいて欲しいんだったら暴力じゃなくて…まあいいか。聞こえてないみたいだし」
俺達の手を繋いで少し急ぎ目に相馬君の横を通り過ぎる
ずっと下を向いて悔しそうにしているのが見えた
…自分の物、か…人として見てなかったんだ
「…祐君、大丈夫?」
「…はい」
「もう少しだからね。達也も来たらすぐ出発しよう。早く新しい所に行きたいし」
桜井さんの手がいつもは冷たいのに今だけは泣きそうなぐらいに暖かかった
「悪い。待たせた、行こうか」
車の中で待っていると先生が来てとうとう車が動き出した
クラスを見ようと思ったけどどこが僕のクラスだったのかわからずにゆっくりと学校を離れていく
「…達也、相馬君と会った?」
「いや。会わなかったな。っ、もしかして」
「でも三人で何とか逃げて来たから大丈夫だよ。怪我もない」
うんと頷けば、ごめんなと頭に手が置かれる
「よーし、新しい所に行くからこの話は終わりにしよう。暗くなるのも、もうおしまい」
「そうだな。ここから行くと少し遠いからコンビニ寄って飲み物とか何か買って行くか」
二人の会話に遠出するようにも聞こえて段々と楽しみになってくる。楽しみだなんて本当に何年ぶりに思うんだろう
「楽しみだね」
高橋がこっそり話しかけてきて、大きく頷く
こうして僕たちは中学を転校して引っ越しをした
三年間いた寮と学校を離れるのは初めてで何もわからないけど、みんなと一緒なら…大丈夫な気がした
+++
「ここだ。結構広そうだろ」
車から降りたら、広そうな白い家。全員で車を降りて改めて見渡すと一軒家のようで柵もあって小さな庭もあった。駐車場も先生と明良さん用に二台ある
「わあ…っ、なんかわくわくしてきた」
「蒼太君目が輝いてる、良かったね」
「俺、こういう広くて綺麗な家、憧れてたんです」
それは良かったと荷物を降ろして早速中へと入る
玄関も三人ぐらいは入れそうだし、入ってすぐ横にトイレと先のドアを開ければ広いリビングでドアの隣に階段があった
「二階建て…」
「そう。その二階はなんと四人のそれぞれの部屋があるんだよ。まだどこに誰が入るか決めてないから俺と達也の荷物がここにある」
リビングの端にどちらかの段ボールが置いてあった
「…ここに、僕も住む…の?」
「お、今度は祐が目を輝かせたな。良かった良かった」
僕たちが感動してるのを見て先生達も嬉しそうだった
そのままリビングで円になってまず自分の部屋をどこにするか決めることにする
「といっても右に二部屋、左に二部屋と典型的な作りで広さも同じ。クローゼットの位置が左右で違うくらいかな。さて、適当に番号を振ってそのくじを作ってきたのでそれを全員で引いて決めようと思います」
桜井さんがいらない紙でくじを作って混ぜる。みんななんとなく引いた結果、右に僕と桜井さん、左に高橋と先生に決まった
その後はそれぞれに荷物を運んだり休憩したりと忙しくなっていった
「今日はここまでにしようか」
あまり荷物もないから、本当を言うと段ボールから出したいだけ
「明日来るもの以外に買うもの、メモしていくか」
高橋、書いてくれるかと言うと高橋は紙とペンを出す
「えーっとタンスとソファは来るから…、冷蔵庫と机、あと加湿器と…」
次々出てくるものに高橋が書いていく
「こんなものか。出かけてみて必要そうなものがあれば言ってくれ」
高橋が先生に書いたメモを渡す
ここでこれから暮らしていく
そう思うとすごくくすぐったくて
まだ今日が初めてだから見慣れない景色ばかりだけど暮らしていくうちに当たり前になっていく
なんともいえない気持ちばかり溢れてうまく言葉にできない
「ここが、これからの帰る場所だ」
そう言う先生に僕たちは楽しみだと笑った
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
55 / 62