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「私が、担任の林といいます。石川さんに大体の事情は聞きました」
…話し合った結果、三日だけ行ってその後は隠さないでまた話し合おうと僕たちは真新しい制服を来て学校に来た
今までにないぐらい、蒼太と話をした気がする
何が怖いのか、その時はどうしたらいいのかとか対策まで考えて…行く勇気だけ先生達にもらってきた
試験も受けて、蒼太と同じクラスになった。編入だから今、林先生と職員室のソファに座って話を聞いてる
「私のクラスはみんな仲良しです。うるさいのが好きなクラス、と言うのかな」
にこりと笑うと厳しい感じの印象は和らいでいていい人なのかなと思う
「でも誰か悪いことをすれば私に報告してくる素直な生徒ばかりです。だから、怖いことはないですよ」
大抵の先生は、見て見ぬフリをする人が多いからあまり信用出来ない
担任はみんなそう言って自分の生徒はいい人ばかりなんだと言うから
…陰では何をしてるのか、何も知らないくせにと恨んだりもした
「大丈夫?」
高橋がそっと手を重ねる。少し冷たくなった僕の手と暖かいままの蒼太の手に息を吐く
「…うん」
「きっと、私の話だけだと信用ないと思うから行こうか。怖かったら遠慮なく言うんだよ」
そう言って立ち上がる林先生の後ろに着いていく
職員室を抜ければしんとした廊下とすれ違う度にがやがやとする教室にびくりと思わずドアから離れる
そっと手を握られて顔を上げれば蒼太が心配そうに見ていたけど大丈夫と小さく言うことしか出来なかった
階段を上って段々とざわざわしてる教室の前にくる。多分、ここだ
…緊張するし、怖い。目が、言葉が僕を否定するような感覚がして息が苦しくなって体が震えてくる
「祐。先生、少し待ってください」
蒼太は僕の両手を握ってくれた。でも不安そうに見える
「俺もこう見えて本当は怖いんだ、すごく。もしダメそうでも先生たちは許してくれるから一歩、行こう」
「……っ」
「…それと、手、握って入ってもいい? やっぱり…怖いから」
そう言った蒼太は困ったように笑っていて、少しだけ震えていた
蒼太も怖いんだと今度は僕から手を握ればありがとうと笑ってくれた
林先生に蒼太が話すと先生だけ先に教室に入ってしまって、緊張と怖さとで息苦しくなってくる
深呼吸と吐くのを長めにと思いながら呼吸をしていけばいいと先生に教えてもらった
こんなところで倒れたら、きっと嫌な噂される気がする。だから…苦しくならないように長く息を吐くようにしないと
「入ってこい」
林先生の声がドアの向こうから聞こえる。ドアたった一枚なのに、震えが止まらない
勇気が出なくて足も進まない
「…行こう。俺がいるから、大丈夫」
手に力が入って蒼太がドアを開けた。見たくないから下を向いて手を引かれて教室にとうとう入る
「高橋蒼太と坂崎祐だ。みんな仲良くしろよ、いじめた奴は先生の部屋でみっちり説教だな」
ざわざわし出して身体が震える。怖い、こんな注目されることもなかったから余計に
「高橋、蒼太です。よろしくお願いします」
ぱちぱちと拍手の音がする僕も言わないとと下を向いたまま、口を開いた
「…坂崎、祐です…よろしくお願い…します」
ぱちぱちと音がしたけどそれどころじゃなかった
「二人ともイケメンじゃん!! こんな人初めてみたよ!」
「俺新井! 野球部入ってんだ! 一緒にやろうぜ!!」
「な、おい新井抜け駆けすんなよ! 俺五十嵐ってんだ! サッカーの方が楽しいぜ?」
俺が、僕が、私が、いや俺がとなぜかみんなで争っていた
その声すら怖くてしがみつくと蒼太は目を見開いていて、その後そっと背を撫でてくれた
「おい、お前ら! 二人が驚いてるから終わったらにしてくれ、その喧嘩」
「勧誘は?」
「学校に馴染んだらにしてやってくれよ。いきなりぐいぐい来られると断りにくいだろ?」
そうかー…と残念そうにするクラスのみんなは中学よりも明るそうだと思った
だけど僕はそこに入ってもいいのかと崩してしまうんじゃないかと今度は不安が出てくる
「な、言っただろ。ああいう奴らなんだ。うるさいったら…」
そう言う先生は楽しそうに笑っていた
「こっちに引っ越したばかりで右も左もわからないから、優しーく教えてやってくれよ! じゃないと俺の部屋行きだからな」
「先生の部屋行ってもなぁ…」
「あれちゃんと整理した方がいいよ、先生」
なぜか先生が言われていて、え、と先生を見上げる
「あぁ、ちゃんと片付けたよ。だから悪いことしたらみっちりその部屋で説教だかんな」
はーいとだるそうな声が響く。ここで僕はやっていけるのかな…みんないい人そう…だけど、僕がいてもいいのか不安にもなってくる
「坂崎君って人見知り? 可愛いなーもー女の子みたいでぎゅってしたい!!」
「本音でてるぞー本多ー静かにしろよー」
どっと笑い声がした。僕はいまだしがみついたままだけど、みんな笑ってて楽しそうだった
「…とりあえず三日は行ってみようかなと思うよ。祐は…どう?」
仲が良いクラスと先生は言っていたし、間違いじゃないけど…でも
「…僕もいていいのかな」
「当たり前。祐いないと俺学校行かないし」
僕もクラスに馴染めることが出来るかな…出来たら、いいなとは思うけど
「ねぇ、高橋君と坂崎君って兄弟なの?」
一人の女子が質問して、一気にしんとなる。僕はびくりとして蒼太にしがみつく力を強める
「…ううん、家族なんだ、俺達」
蒼太が何の躊躇いもなく家族だって言う。きっと気になる人はたくさんいるはずなのに誰も聞かないまま
「そっかぁ幸せそうだね」
ふわりと笑ってくれる。僕も答えようかと思ったけど、震えて声は出なかった
…ありがとう、そう言いたかった
何もかも始まったばかりで何が起こるかわからなくて不安で正直いっぱいだけど、今の所は…大丈夫な気がする
これから、どうなっていくんだろう
終わったようで始まった、僕らの新しい生活
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