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Lesson.4
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喚く三好を支えながら、多希は駅のロータリーを目指した。
久しぶりに飲み過ぎたので、多希も家に帰って休みたい。
十時過ぎ頃、そろそろ終電間際で人の流れは駅のほうに吸い込まれていく。
人混みの中、多希達の前を男女のカップルが横切った。
──え?
「久住さん」と呼びかけようとして、思いとどまった。
横顔しか見えなかったが、多希の視界に飛び込んできたのは、間違いなく久住だった。
振り返って後ろ姿を確認してみても、やはり久住で間違いない。
そして隣にいるのは、理知的で上品そうな黒髪を纏めた女性だった。
会社の知り合いなのだろうか。
それにしても、二人きりで平日の夜に出かけるだろうか。
会社の飲み会の帰りか何かで、帰り道が一緒になっただけかもしれない。
──でも、久住さん……笑ってた。
料理教室で時折見せるような……それよりも。
表情のバリエーションに乏しい久住が、多希に見せたことのないような表情で、隣を見ていた。
それが意味することは……。
「多希くん? 多希くん……大丈夫? おーい」
雑踏へ消えていくお似合いの二人の背を、多希は手の届かないところから見送った。
──『俺と付き合ってほしいんです』
『俺はいつまでも待ってます』
『由衣濱先生が俺の初恋です』
全部、嘘つき。
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