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4巡目
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目の前で、泣きそうに微笑んでいる黒子と、釣られて泣きそうなおれ。異様な状況下だが、いつまでもこうしておくのはダメだろう。
「な、自己紹介しないか?」
「…自己紹介、ですか?」
「そう、…よく考えたら、下の名前も聞いてないし」
本当は、知ってるけど。黒子は、おれの言葉に頷きながら、目を合わせた。
「それもそうですね。…僕は、黒子テツヤといいます。…キミの名前は?」
「おれは、降旗光樹。よろしく、黒子」
おれがそういうと、黒子は何故かモジモジとして、おれを見てきた。…どうしたんだ、一体。
「あ、あの、降旗くん。えっと、…っ」
どこか不安そうな黒子に、首を傾げる。
「なに?どうかした?」
「さ、差し支えがなければ、な、名前を……」
「え?」
「名前でっ、呼んでくれませんか!!」
驚いた。何がって、黒子がそんな積極的だなんて思わなかったから。ーーー、でも、いままでの会話から分かる様に、そんな人も居なかったのだろう。すぅっと、息を吸う。
「テツヤ」
「…ぁ、…はいっ!」
満面の笑みだった。正直、前の黒子の笑顔は、微笑んでるものしか見たことがなかったし…、あ、でも、一度だけ。WCを優勝したときだけは、こんな感じで笑ってたと思う。
「それじゃあさ、不公平だから、おれのことも名前で呼んでよ、ね?」
「光樹くん。……光樹くん、光樹くん、光樹くん」
ふふ、とおれの名前を何度も呼んで、満足そうにしている黒子。すっごく嬉しそう。ーーーなんか、いいなあ。もっと、仲良くなりたい。前は、こんな感じじゃなかったから。チームメイトっていう立場でしか、話をしたことがなかったから。
ーーー普通の、友達みたいに。
「よろしくお願いしますね、光樹くん」
「…、うん。うんっ、こちらこそよろしくね、テツヤ」
顔を見合わせて、思わず笑う。
ーーーーああ、しあわせだ。
関わらないように、って言ったけど、黒子はいいよね?かつての仲間と、関わるのはいいよね?
この、小さな幸福感を感じることくらいは、許して。
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