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5巡目
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二人で笑いあっていると、鐘の音がした。ということは、いまから式が始まるのかな。
「あの、光樹くん。この鐘……」
「うん、移動した方が良さそうだね」
おれのその言葉で、一緒に移動する。体育館までの道のりで、いろんな話をしたが、ふとテツヤが思い出したかのように、口を開いた。
「そういえば、知ってますか?実は、今回の新入生代表の人、新入生テストで異例の満点だったそうですよ。世の中には、凄い方もいるもんですねぇ……」
「あ、は…はは。ほんとにねえ…」
それは多分、いや、十中八九アイツだろう。考えただけでも、寒気がする。おれがキセキの中で、一番遭遇したくない人物だ。
「っと、座ろうか」
「ですね」
ーーーー次は新入生代表挨拶です。
淡々と式が進行し、遂にこの時がきた。
ーーーーでは、赤司くん。お願いします。
「はい」
いままでザワザワと騒がしかった周囲が、彼のその圧倒的なまでの威圧感で、シン、と静まり返った。そんな様子を気にかけるまでもなく、アイツは、ーーー赤司は、優雅に壇上に上がっていく。
壇上につき、一呼吸おいて、赤司は話し始めた。
「若い草の目も伸び、桜の咲き始める春爛漫の今日、私達はーーー」
無事、式も終わり、教室へと帰る。
「なんというか、随分と大人びた感じの方でしたね」
あの子、…赤司くん、でしたっけ
ほぉ、と感心したような溜息をつきながら、テツヤは言った。…おれ的には、赤司のあの威圧感で、軽く前のときのトラウマを思い出したのだけれど…、テツヤは赤司に対して何も感じなかったのだろうか。
「ん、そうだね。…彼が異例の?」
「ええ、だと思います。なんだか、そう言われても違和感がありませんね」
「確かに、あの風格だとなあ…」
思わず二人して苦笑する。前のとき、黒子が言ってたような気がする。彼は、(ーーー赤司くんは、出来過ぎた人間なのだ)、と。確かに、おれもそう感じた。いや、一目見たら大体の人間は、そう感じるのではないだろうか。そんな雰囲気がでているのだ。赤司には。いわゆる、王者の風格というのだろうか。
「そういえば、次は何の時間?おれ、さっき話し聞いてなくてさ…」
「ちゃんと聞いてなくちゃ駄目じゃないですか。…えぇっと、確か委員会決めをするって言ってましたよ?」
「委員会かあ…」
「ええ。光樹くんは、何にするか決めましたか?ちなみに僕は」
「図書委員、でしょ?」
「っ凄いです!なんで分かったんですか⁈」
「ふふ、秘密!」
無邪気に喜んでるところ悪いけど、前の知識があるからね!確か、テツヤ本が好きだったと思うし。
「ほんと…、光樹くんにはかないませんね。僕達、今日始めて会ったっていうのに…、なんだか不思議です」
「…もしかしたら、どこかで会ってたりしてね!…まぁ、冗談だけど」
ココとは全く違う、遠い遠い所。もう、二度と戻れない場所で。
「う、うぇ⁈」
突然、強い力で頬を抑えつけられた。力強い眼差しで、おれを射抜くテツヤ。
「…光樹くんは、どうしてそんな顔をするんですか?」
「ひ、ひぇ?にゃ、にゃにが」
「今日、君と話をした時から、思ってたんですが、ふとした瞬間に、君はどこか悲しそうに、遠くを見ているような気がします」
「………」
「まだ、知り合って少ししか立っていないけれど、僕は君の、光樹くんの力になりたいんです。君は、ある意味僕の恩人ですから」
「て、テヒュヤ…」
「それとも、…僕には話せませんか?」
テツヤは、少し不安そうにこちらを見てきた。
できることならば、話して楽になりたい。けど、今はそうするべき時ではないと思うし、なにより、タブーだと思う。だから、
「ごめん」
いつの間にか離された手を追うように握り締め、謝った。テツヤは、その言葉が出てくるのを分かっていたように、寂しそうな顔をしながら頷いた。
「…僕の方こそ、すみません。不躾なことを言ってしまいました。……でも、」
ーーー諦めたわけじゃありませんから
強い意志の篭った目で、おれを見る。
「いまは、まだ、言わなくていいです。でも、いつかーーー、いつか、君の心の整理がついたならば、そのときは、」
「もちろん、一番にテツヤ、君に言うよ」
「…なら、いいです」
テツヤはそういうと、ふわりと笑った。
ごめん、いつか必ず、必ず、お前らには説明するから、だから、それまではーーー。
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