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8巡目
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「まあ、なんでただの自己紹介なのに、某少年漫画とかでありそうなシーンなのとかツッコミたいけど、黙ってるね、うん」
「うっせえ!オレだってやりたくてやったわけじゃねえよ!」
若干冷めた視線を送る先生。灰崎はそれに少し頬を赤らめて舌打ちした。…自分でも思ってたわけね。
「ま、まあまあ、2人とも落ち着いて…。あの、ところで下尾先生、結局呼び出したのはどんな用件があったからですか?」
なんとなく居た堪れない雰囲気になったので、流れを変える為にも話を振ると、下尾先生は、あ、という顔をした。…完璧忘れてたな、この人。
「あー、そうそう。忘れてたわけじゃないけど、委員の当番とか決めようと思ってたんだよね。忘れてたわけじゃないけど」
「いや、目ェ泳いでんぞ」
「ちなみに、どういった風に決めるんです?」
「別にそこまで詳しく決めてるわけじゃないんだけどねぇ。…んー、取り敢えずは学年ごとの2ペアずつ?」
「学年、ごと…ですか」
側に立っている灰崎をチラッと見る。向こうもたまたま此方を見ていたのかバッチリと視線が交わった。…き、気まずいかなぁ。
「ええっと、あの、取り敢えずはおれ、他の子と…」
「オレは別にこいつで構わないぜ?ーーー聞きてぇこともあるしなァ」
お前もいいだろォ?なあ、フリハタくん?
「ひゃい?!」
「おいおい、灰崎クンさぁ、君カツアゲでもしてる不良みたいな顔してんよ?…ま、今この場所に君ら2人丁度いるし、これで当番組んどくわ。君らは月曜に入れとくから」
じゃ、今日はかいさーん。あ、鍵ココに置いとくから、職員室に返しといてなァ。
そう言うと、先生はヒラヒラと手を振りながら保健室を出て行った。……ん?出て行った?と言うことはおれと灰崎の2人っきり⁈ダメだ耐えられない!急いで扉へ向かう。
ダアァンッ!!!!
「ククッ、なに、このまま話あやふやにして出て行けると思ってたのか?…なァ、ーーーフリハタくぅん」
もう少し、もう少しで逃げ切れると思った矢先、後ろから伸びた、進行を邪魔するようにある腕のせいで身動きができない。恐る恐る振り返るとなんとも愉快そうな顔をして立っている。…つか、リアル壁ドンめちゃくちゃこええ。あと、顔近い!
「あ、あはは…えと、このままお流れとか」
「ねえな」
「いや、でも、」
「こっちも!!!」
ビクッ!
「状況よく分かんねえんだよッ!!知ってる奴がいたら話くらい聞いとくのが得策だろうが!!」
あ、れ?なんか、灰崎…泣き、そう?ゆらゆらと瞳を揺らしながら告げ、そっと横にあった腕を外した灰崎。…おれもそんな姿を見ると、逃走本能が薄れていった。
「ええっ、事故ぉ!!?!?」
「おう」
話を要約すると、灰崎はおれ等ーーー誠凛と洛山ーーーの試合後の帰り、信号待ちでボーッとしてたときにいきなり背後から突き飛ばされて、車に引かれたらしい。死にたくないと薄れゆく意識のなか強く願ったら、ーーーそこからはおれと同じらしい。つまり、灰崎も逆行したのである。
「話を聞く限り、共通点は…」
「ああ、"瀕死になる"のと"生を強く願うこと"だな。……なんでフリハタくんが泣きそうなわけェ?」
え、泣きそう?おれが?余程間抜けな顔をしていたのだろうか。灰崎は呆れたように嘆息すると、手を伸ばした。
スルリ、
「てか、泣いてるし」
「ぁ、」
泣、いてる…?
「ご、ごめんっ、ちょっと待って、あ、あれ?」
自覚をすると溢れてくるものである。ポロポロと零れてくるそれを止めようと、必死で顔を拭うも、治まらない。
「あのなぁ、なんでアンタが泣く必要があんだよ」
「ふ、っなんか、あ、安心した、みたい、っで、っく」
「ああァ?安心?」
「ひっ、ひとりだとおもってたからっ、ずっとっ、ぅあ、わけがわからないじょうきょうで、ひとりで、っいきていかなきゃいけないっておもっ」
グイッ、ポスン
みっともなく、えぐえぐと泣いてると、揺らいでた視界が、一色に統一された。
「あーー、落ち着け。大丈夫だ。独りじゃねえよ。ーーーオレがいる」
頭の上を不器用にわしゃわしゃと撫でてくる。その感触を目を閉じながら、堪能する。
「灰崎、」
「あ?んだよ」
「ごめん、鼻水ついた」
「ハァアアッ?!?!」
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