アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9巡目
-
ずびっ
「……もう大丈夫そうだな」
「ん、ありがと」
灰崎から手渡されたティッシュで鼻をかみ、礼を言うと何とも言えない表情をした。…大方、自分の制服が汚されたのと感謝されたのとでごっちゃになっているのだろう、と思う。すまん灰崎。悪いことをしたなとは思うけども、反省はしない。
「あ、そういえば…だけどさ、灰崎って部活……」
ふと思ったのは部活のこと。今は放課。この時間なら、黒子同様に体育館で部活動見学に行っているはずだ。それに行かず、委員会の呼び出しに応じたのは、ただ単に見学に行くまでもないのか、サボりか。はたまた、ーーーー入る気などサラサラないか。どれとも予測はつかないが、この目の前の男は一体どんな答えを出すのだろうか。じっと目を見つめる。
「あ、」
「え?」
「え、ちょ、フリハタくんさ、いまなんて」
「だから、部活が」
「……やべえ」
さあっと顔から色がなくなり、しきりにやべえやべえと繰り返す灰崎。もしかして…、
「もしかしてだけど、さ、灰崎。部活動見学、今日っての知らなかった?」
「あ、オレこれ詰んだわ」
仕舞いには菩薩のよな表情で悟り出す。
「しょうがねえだろ。大体オレここでフケてたし。……ま、そんなもん行かなくてもオレには関係ねえし?」
「灰崎」
「あ?なにフリハタくん」
「そんなに足震わせてから言われても説得力ないよ」
こんなに怯えるなんて……。帝光のバスケ部はそんなにもスパルタなのだろうか?
「とにかく、オレはぜんッッッぜん怖くない!し、震えてもねえ!おい、聞いてんのかフリハタ!」
「っふふ、うん…。き、聞いてる聞いてる。…て、あれ、名前」
「なんだよ」
「あぁーー、いや、どうせなら光樹って呼んでよ。こっちも名前で呼ぶし。えーと、」
「祥吾。んじゃあ?遠慮なく呼ばせてもらうぜ、コウキくん?」
「はいはい。つか一々そんな悪い顔しなくても」
「生まれつきだよ悪かったな!」
二人顔を見合わせて噴き出す。こっちにきて久しぶりにこんな大声だして笑った気がする。目尻に浮かぶ涙を救いながら、手を差し出す。
「え、ナンデスカ」
「ははっ、なんで片言なんだよ。…ん、握手」
「なんで握手…」
「いいからいいから、はいっ」
ぎゅっと手を握り、祥吾を見て笑う。
「これからよろしくな、祥吾」
「…ッチ、恥ずかしい奴」
でも、まあ、よろしくしてやらんこともない。
空いた手で首をさすり、視線をウロウロ彷徨わせながら呟いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 10