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28 回想
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それは、4年前のあの日。
運命の、15日。
いつものように、要と湊が待ち合わせをしていた。
その日は要のバイトが長引き、
【ちょっと遅れるから、近くのショップにでも入ってて。
着いたら電話するから】
そんなメールを送っていた。
しかし、湊は待ち合わせ場所から離れなかったらしい。
遠くから湊の姿を見つけた要が、駆け寄ろうとした時だった。
飲酒運転の車が、湊のいる場所に、突っ込んだ。
血を流す湊を介抱しながら、救急車を待つ間の事は、よく覚えていない。
けれども、その時間は要にとって、とてつもなく長いものだった。
湊の他にも、二人の女性が被害に遭ったが、幸い骨折だけで済んだと、ニュースで聞いた。
要に付き添われて救急車に乗った湊は、懸命に生きようとしていた。
しかし、湊の心臓は、手術に耐えきれなかった。
手術を待つ間、新や病院の院長夫妻でもある湊の両親が駆け付けてくれた。
湊の血に染まり震える要に、着替えだけでも、と勧めてくれたが、要はその場から動けなかった。
長い長い時間が、過ぎた。
手術室から出て来た医師は、院長夫妻を見つめ苦しげに首を振ると、深く頭を下げた。
要は、そこから先は、もう覚えていない。
何の感情も湧かないまま、ただ日々を過ごした。
そして、湊の一周忌。
自らの命を絶とうとしたのだ。
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