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「なぁ、隣りいい?」
そいつの肘横に手をついて覗き込むと、此方に移った髪色と同じ瞳がキラリと揺れたような気がして、一瞬の時の停止を覚えた。
「え?あ……はい」
そいつは返事はしたもののすぐに目線を落として手元のカクテルを飲みなれていない、と言ったような仕草で小ぶりで柔らかそうな口に少しづつ含ませている。
そのあまりに素っ気ない態度に視線をひとつ動かしてバーテンに強めの酒をオーダーして、すぐに出てきたそれを手に真横の背の高い椅子へと腰を降ろす。
どうでもいいけど、なんでまた俺はこいつに声かけてんだ?
「よく来るの?」
「……や、初めて、です」
質問を投げかければ案外まとに返事はしてくれるようだ。
「初めてそうには見えなかったけど…ん、俺の顔に何かついてる?」
頼んだ酒は特に度数の強いもので、口を付けると鼻先にアルコールの香りが霞める。この匂いが好きだ、酒は人を開放的に……時に素直に欲望を曝け出すようになる魔物だから。
手慣れた仕草でグラスを傾け、そこへ向けていた視線をゆっくりとそいつへと向けるとぶつかった視線、なんでか知らないけど此方を向いて固まっているから困ったもんだ。
そのまま数秒見つめあったかと思えば、俺は自然と笑みを浮かべていた。
―――わかった
この色だ、この色がいけない。
髪と同じ瞳が俺を惹きつけて離さないんだ。
「へっ!?あ、いえ…貴方はよく来るんですか?」
そいつの段々高揚を見せる顔と、その後ろでこっちを見て頬を染めている女を見てなるほど気付いた。俺、今すげー誘い顔してんだな。こりゃ好都合。
ぎこちなく無理に浮かべた笑顔に脳内の片隅の俺の悪魔が囁いた。
決めた―――、こいつが今日のお持ち帰り。
「……ふーん。俺は常連、かな。此処に来るってことはそういうことなんだろ?どう、今夜は俺にしとく?」
そうと決めれば即行動が俺のセオリー。鉄は熱いうちに打てって言うだろ。こいつもまんざらじゃない、それだけはわかる。
目を細めてそいつを眺めること数秒、ぐっと距離を詰めてそいつの腰掛ける椅子の背凭れに手を掛けて囲うのは勿論誘ってますが何か。
俺より随分と小さなその身体をすっぽりと包んでゆっくりと顔を近付けた到着点はそいつの耳元で、そっと囁く声色は俺の出せる最大限に低く甘さを足したもの、しかも吐息混じりってのはその気になって貰うサービスな。
「んっ」
ビクついた肩と漏れた声はなんとまー淫乱っ子。今日の獲物は稀に見る上玉だ。
耳に淫乱スイッチでも入ってるんじゃないかって程に豹変したそいつは俺の服を握り、慣れたような上目遣いで此方を見た。
「……僕を、抱いてくれるの?」
触れれば気持ちの良さそうな唇が俺を誘ってくるわけだ。これは何かの罠でも文句はないな。
――のった。
「……へぇ」
目を細めて薄ら笑いを浮かべた俺は己の顎をひと撫でして再度そいつを確かめる。色気十分、しかもこれは男を知ってると判断できる……うん、申し分ない。
蜜柑色の髪に触れると見た目以上に指通りが良く、その手を後頭部に回すと髪がそのまま流れていく。指先で糸のような髪を弄びつつ引き寄せれば、ずっと食ってみたかった唇が目の前に来るからそりゃ舌なめずりもしたくなる。
ゆっくりと顔を傾けつつ触れた唇はやはり柔らかくて俺の欲望を掻き立てた。
額を摺り寄せて口角を上げたときに固まった気持ちはひとつ。
―――めちゃくちゃにして、そのときの恍惚としたこいつの顔を見てみたい
「可愛がってやるよ」
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