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「っ、くっそ」
捨て台詞を吐いて、男たちは逃げていってしまった。
オメガである自分を、アルファの人が助けてくれた———七生は不思議だった。それは、初めて、こんなにも自身の心が震えた人物に出会ったからなのか、ただ単に、その場の雰囲気に呑まれてしまっただけなのか。七生には分からない。
「……お前、大丈夫か?」
「は、はい……すみません、俺」
ご迷惑を、と七生は俯いて呟く。まだ声は震えていて、触れられたところがじくじくと熱を持っていた。
それがとても気持ち悪くて、早く消えてと願いながら、七生はぎゅっと目を瞑った。
「悪かったな。俺の家のが……酷いことして」
城島は、七生の頭を撫でる。
思っていたよりも優しいその手に、七生は自分が安心していることに気が付いた。
じんわりと瞳に涙が溢れて、あっという間にぽろぽろと流れ出た。
七生の泣きっぷりを見て、城島はぎょっとしていたけれど、気持ちを理解してくれたのか、それ以上は何も言わなかった。
それから、半刻近く七生は静かに泣いてしまった。中庭には他に人がいなかったため、ゆっくり落ち着いて、と七生の背中をさすりながら言う城島の声が、とても優しくて心強かった。
(アルファって、こんな人もいるんだ……)
自身の家に関わりのある人物にしか会ったことのなかった七生は、出会ったばかりの自分と、何故これだけの時間を一緒にいてくれたのか不思議でならない。
七生自身も、こんなに泣くことはないと思うくらい泣いた。恐怖も勿論あったけれど、自分でも驚くくらいだった。
泣くだけ泣いて落ち着いてから、城島はウェイターを呼んでくれて、破れた七生のタキシードを着替えられるように手配してくれた。
その過程がかなりスマートなもので、ウェイターとの会話も、主従関係があるように見えた。
用意してもらった別の礼服に着替えている時に、ウェイターと話す声が聞こえてきて、助けてもらった人物が、自分が出席していたパーティーの主役である、城島太史(きじまたいし)という人物なのだと、七生はそこで初めて知った。
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