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なんて、そんな考えても仕方のないことをぐるぐると巡ってしまうのは、もう二週間も同じところで生活しているからだ。
そもそも、何故こんなに閉じ込められなければいけないのかも七生は分かっていない。イギリスの自室はホテルよりはるかに広いし、別邸で生活していたので、外へも自由に出られていたのだ。
「七生様! どちらへ!?」
「外に出たいなと思って……」
「それは困ります。アドルフ様がご心配されます」
宥めるように、使用人は七生の前に立って言った。
「心配って……」
(父さんは、俺のこと心配なんてしてないよ)
呟いた七生は、その場から動かないでいる。一体父親は何のために、七生を日本へ連れて来たのだろうか。
———その時、部屋のドアが大きな音でノックされた。
誰でしょう、と使用人がドアを開けると、そこには長身の男が立っている。
その姿に、七生は首を傾げた。
「父、さん……?」
七生よりはるかに背が高く、口髭を蓄えた黄金色の髪の初老男性。それに、まだ若かった過去の父親の姿を重ねて見て、思わず声に出してしまった。
何年振りかに見た父親は、小さい頃より遥かに厳格な雰囲気を纏っている。
「……七生、来なさい」
低く呟いてすぐに、父親は七生の腕を乱暴に引いて歩いていく。
「ちょっと、父さん! 何なんですか急に、腕痛い! 離してください!」
抵抗する七生の力は微力なもので、嫌だと言いながらも引き摺られるようにホテルの一階へ連れられてしまう。
ロビーの一番奥にある、会食の出来るほど広い部屋の前で、父親の脚は止まった。
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