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「うちのにもそろそろ、相手を見つけて貰わんといけなくてね。オメガなら、男子でも跡継ぎが産める。それにイギリスの名家なら、安心だと思ったよ」
相手方の言葉で、七生は全てを理解した。
自身の父親は、オメガである息子を、日本の大財閥を継いだアルファの嫁にしようと考えていたらしい。関わり合いの浅かった父親に対して、こんな重たい気持ちを向けたのは初めてだった。
けれど七生は、どうしてと泣き縋りたい気持ちを抱える傍ら、自身の境遇も冷静に考えられていた。
自分は一族で初めてのオメガで、上には兄弟もいる。アルファである彼らに後継を産ませて、末弟の自分は他の家に嫁に出して、その家の後継を産ませる。オメガは男性でも妊娠可能な唯一の性で、希少性も高い。欲しがるところは探せばいくらでも出てくるのだろう。
おそらくこれが、父親が自分を養子に出さなかった理由なのだと、七生は同時に悟った。
自身の会社を大きなものにするために、七生は利用されたのだと思った。
(そういうこと、か)
嫌だよ。結婚なんて。
そう言って泣いてしまいたい。でも、そんなことをしても状況が変わらないことも、七生は知っている。
「……太史くんは、如何にもアルファという出立ちですな」
そう、父親が七生の向かいに座る男へ声を掛けた。男はただ不機嫌に俯くだけで、父親の言葉への返答がない。
どこかで聞いたことのある名前に、七生は首を傾げていた。
(たいし……? って、もしかして)
目の前の男は、初めて出会った時とまるで雰囲気が違っていたので、七生は一瞬別人かと思った。
彼は、二週間前———パーティーで出会った、七生を助けてくれた人物だ。
けれど、あの時の優しく紳士な彼とは対照的で、無愛想に顔を顰めて項垂れる様子は、思春期の子どものようだった。
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