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「おい太史、お前も挨拶しないか」
「……」
“太史(たいし)”と呼ばれた男は、むすっと顔を歪めている。「なんなんだよ」と低く呟いた声は、舌打ちと共に聞こえてきた。
城島太史(きじまたいし)は、大学を卒業後、城島家の跡取りとなるために家を継いだ。引き継いでからやる事といえば色々あり、それは、次の跡取りになる人間を残すことも含まれていた。
けれどこの対応を見るに、城島自身、自分から進んで来たわけではなさそうだった。
「……城島太史です。俺、この話無かったことにしたいんすけど」
城島の父親は、ふん、と息を吐く。
「太史、お前がその辺のアルファの女ではダメだというから、組んだ縁談なんだぞ。それに、八神さんの経営している会社とはこれからも仲良くしたい」
だから文句を言うな———そう切り捨てるように言った自分の父親を、城島は睨みつけていた。
「……だから、そんな気分じゃねえんだって」
政略婚というなら、これはそれに当たるのだろう。日本の三本の指に入る資産家の城島の家と、イギリスで名前を知らない人はいないであろう貴族家の血筋の七生———これから世界中に会社を広げようとしている城島家にとって、七生の家との関わりは特に深いものにしたいらしい。
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