アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
19
-
二号棟ロビーの奥、一般客が入れないような場所まで来ると、「ここです」と一番奥の扉を先頭の男がノックした。
「城島様、お客人です」
入ってもらって、と部屋の中から声が聞こえる。それは、前に聞いた怒声でも、不機嫌に歪んだ声でもない———どちらかと言えば、初めて会った時の、紳士的な優しい声音だ。
普段は控え室として使われているその部屋は、こじんまりとしているけれど、軽いものも全て高価な品物だとすぐに分かる。奥に小さなキッチンと、居間にはリビングテーブルが置かれていて、その両脇にソファが向かい合うように並べられていた。
そこへ七生を迎え入れたのは他でもない、城島太史本人だった。
初めて会った時の優しさを交えた柔らかい表情、そして、その声は出会ったときよりも少しだけ低く落ち着いている。
「……そこ、座って」
そう城島に促されて、七生は出口側のソファにそっと腰をかけた。
「いきなりでびっくりしただろ? うちの親父はいつも急なんだよ」
呆れたように眉を下げて城島は笑う。すると、使用人にやらせるわけでもなく、自身でコーヒーを淹れ始めた。「砂糖とミルクは?」と聞かれて、七生は慌てて「欲しい」と首を縦に振る。
その対応を見るに、七生は少し混乱していた。
確かに、城島が父親に反抗している姿を、少しではあるが見てしまったからだ。それなのに、たった数日でこんなにも対応が変わるものなのかと、おどおどする。
———何言われんだろうって思ってる? と、城島は軽く笑って七生の向かいに座った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 178