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———……
———……
夜。
七生は入浴を済ませて、ベッドに入ろうと髪を乾かしていた。八月下旬の今はもう、夏の暑さも落ち着いてくる頃だ。夜はもう気温は上がらないので、体温を下げるために散歩に出ようとしていた。
「……シャーロット、少しだけ歩いてくるね」
「はい。くれぐれもお気を付けて」
ありがと、と言うと、七生はそのまま部屋を出る。
シャーロットは最近、七生を一人にしてくれることが多くなった。普段はオメガということもありホルモンの変化に過敏だけれど、それも落ち着いている今は、比較的放任になっている。
(薬、貰えて良かった……発情期が来ないのはダメって言われたけど、まだ急に来られるよりはマシだな)
———以前は薬を処方されていなかったけれど、城島と部屋を離すことを決めてから、前に飲んでいた抑制剤を服用することにした。城島と離れて過ごすため発情期に入ってしまうと色々と大変だからと、医者が悩みに悩んで許可してくれた。
オメガの発情を止められるのは、オメガ用の抑制剤とアルファとのセックスのみだ。セックスをしないとなると、七生に与えられた選択肢は抑制剤の服用しかなくなる。
毎日微量のフェロモン剤を含んだ抑制剤を服用することで発情期の後半によくある身体の状態を作り、併せて体臭を弱くする薬を服用する———そうすることで、常に身体は発情期の状態になるが、火照りや呼吸の乱れ、性欲の増加などの症状は抑えられるようになる。
フェロモン異常が確認された七生が服用して良いのは、その中でも超微量の薬のみだった。
(……あ、風。涼しいな)
廊下へ出て噴水の見える中庭を見下ろすと、月の光が照らしてキラキラと水面が光っていた。空は雲一つなく、満天の星だ。
イギリスではよく、使用人達と空を眺めながら星座を調べていた。
自分の生まれた月の星座の神話を聞かされながら眠ったこともある。あの時に面倒を見てくれていた四十路の使用人は、七生が発情期を迎えてから屋敷には来なくなってしまった。
そんなことを考えていると懐かしさが込み上げてきて、七生はふっと笑みを溢す。
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