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過去①
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「手、繋ごうよ」
咄嗟にそう言われて、彼の左手が触れる。
暖かくて心地いい掌は、僕の心を癒してくれた。
ディープキスや乳首をいじってきたのに。
前にいてリードしてくれる行為に、好感を持ち始めている。
二人で廊下を小走りで進んだ。
だがこの瞬間。
一つだけ疑問が生じてしまう。
なぜこの男は僕が看守だと知っているのに、こんなにも寛容に受け入れてくれるのだろうか?
囚人なら僕のことすぐさま殺すかと思ったのに。
「あの……」
「理由なんてない。キミは面白いから一緒にいても安心できる。それだけだ」
僕の考えていることは、全てお見通しらしい。
話しかける前に答えを言われてしまった。
何を話そうかと考えていれば、彼はT字路のところで立ち止まる。
僕もそれに合わせて立ち止まり、彼の表情を見た。
満面の笑みを浮かべている。
本当は冤罪ではないかと思ってしまうほど、性欲が溜まっているただの優しい男にしか見えない。
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