アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9
-
あの日から、週に1~2度ほど、五木は久貴の勤め先に顔を出すようになった。
未だに連絡先すら交換せず、五木が直接店に来たときにしか会う手段がないのは、なんとも五木らしい。
本来なら連絡先を伝えるのも久貴の仕事の内なのだが、初めて会った時に面倒そうな様子で名刺をやんわり拒否されてから、久貴は怖じ気づいてしまったから。
しかし五木は店に来ると必ず久貴を指名し、五月蠅いのは苦手だからとヘルプを断り、一番奥の比較的静かな席で2人の時間を過ごしてくれる。
更に、月に2~3度は、アフターという名目で久貴を持ち帰っている。
行き先は五木のマンションだったり、久貴のアパートだったり。
『少なくとも、嫌われては無いと思いたいけど…』
久貴は枕営業なんてしたことは無かったが、五木からの誘いはどうしても断れなかった。
ここ数ヶ月で、ほんの少しではあるが五木の事を知ってきた。
年はもうすぐ35歳。
会社を立ち上げ成功し、社長として忙しくしている。
ぶっきらぼうな物言いには、優しさが隠れている。
久貴を慈しむようなセックスは、甘く甘く、久貴を底無しの快楽に連れて行く。
知れば知るほど惹かれる自分を、久貴には止める術もない。
身体がどんどん慣らされ、快楽に溺れていくのとは裏腹に、心は締め付けられるように痛む。
五木に移った残り香は、毎回違う香りで。
五木の優しさに期待しそうになる度に、久貴は自身に言い聞かせる。
『あの人は、好きになっちゃ、いけない人』
しかし、それはもう、遅過ぎる言葉。
五木に優しく抱かれた次の日は、独りの部屋で虚しさに泣くのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 157