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一
逢いたい気持ちが死者に会わせるのなら、俺はどうしてまだ逢えないんだろうか。
こんなに、逢いたいと願っているのに。
住んでいるアパートのポストを開けると、フリーペーパーに混じって一枚のハガキが入れられていた。自分の宛名だと確認して裏を見れば、それは久しぶりに見る知らせだった。
「……もうそんな時期か」
簡素な、黒の明朝体で書かれた“法事の知らせ”に、軽く溜息を吐く。もうかれこれ五年は過ぎていることを知って、時の流れはあっという間だと思った。
今時メッセージアプリを使わないところが、相手方らしいなぁと思ったので、軽い笑みが溢(こぼ)れる。スマホを取ると、メッセージアプリの連絡先欄にあるハガキの差出人の名前を押して、メッセージを送った。
“法事のハガキ見ました。今回も出ます”
絵文字も何もない文章だけど、自分にとってはこれが普通だった。家族や友達に対しても同じなので、よく「お前のメールは冷た過ぎて事務的過ぎる」なんて言われるのだ。
十分後くらいに来た返信は、こちらに合わせてくれたのか、絵文字のない文章だった。たまに連絡を取る時は、スタンプや絵文字も使う人なのに珍しいと思った。
“ありがとう。蒼(あおい)も喜ぶわ”
蒼。
その名前を聞くたびに、見るたびに思い出す。
高校時代まで学校が同じで、いつも一緒にいた———兄弟のように育ってきた、幼馴染のことを。
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