アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
無情な現状 <Side S
-
「あー! 鬱陶しいなぁ!」
自分で言うのもなんだが、俺がここまでキレるのは珍しい。
リビングのソファーに座り、銃の手入れをしている俺の腿に、いわゆる膝枕のように頭を預け、ごろごろしているフリック。
フリックなどと日本人らしからぬ呼び名だが、膝の上でごろごろしているこいつは、純和製の人間だ。
髪の毛の大半は目映(まばゆ)いくらいのオレンジ色だが、伸びてきた根本部分が綺麗な漆黒で、地毛が純和風の黒髪だとわかる。
集中力の切れた俺は、分解したままの銃をテーブルの上に放り、ソファーの背にぼふりと身体を預けた。
「仕方ないじゃん。あんたが拾ってこいって言ったんでしょ? したら、あんたが面倒見るしかないじゃん」
今回の指示出しは、紛れもなく俺だ。
金を取ってこいと誓斗の指示で動いた葵依に、ついでに、フリックを含む数人をタヌキ親父の手から逃がしてやってくれと頼んだ。
フリック以外の奴らは、解放された瞬間に、蜘蛛の子を散らすがごとく、姿を眩(くら)ませたらしい。
あのタヌキの懐から金をせしめれば、破産は免れない。
そうなれば、今度は囲っているこいつらが、過酷な環境下で稼がされるだろう未来が容易に想像できた。
暴利で金を借りるように仕向けられ、沈まされた奴らに尻拭いをさせる道理はない。
俺は、逃がすべきだと判断した。
進言に誓斗は、金さえ手に入ればそれで良いと、その辺は俺に任せると丸投げだった。
……こういう面倒くさい奴がいるって知っていたからってコトか。
ぁあっと無情な現状に、思わず天井を仰ぐ俺。
もぞもぞと蠢く腿の上の感触に、俺は視線を戻す。
くるりと身体を180度回転させたフリックは、両手と顎を腿に乗せ、犬がオネダリをするかのような、つぶらな瞳で俺を見上げていた。
犬や猫、小動物がそうするなら、可愛いとは思う。
だが、フリックは立派な大人だ。
身長168センチと小さめであるが、立派な成人男性だ。
拾ったからには責任を持って飼えと詰めてくるフリックに、大っぴらに溜め息を吐いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 20