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音もなく溢れる雫は
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「こんなとこでヤってたら、起きたフリックに、すぐ見つかりそうだな……」
ぼそりと放たれた誓斗の声に、扉を振り返ったが、微かに開いている扉の先に人の気配は感じなかった。
フリックが居間でうたた寝している最中に、仕事の話をするために入った書斎。
起きたフリックは俺を探し、真っ先にここに来るだろう。
「あんたの部屋に行くか」
ゆるりと立ち上がった俺は、デスクに腰掛ける誓斗を横抱きに抱え上げた。
「俺、自分で歩けるけど?」
素直に俺の首に手を回し、身体を預けておきながら、嫌がる素振りもなく紡がれる声に、笑ってしまう。
「姫はこうして運ぶもんだろ」
〝お姫様抱っこ〞って言うしな、と足を進めながら話す俺に、誓斗もくすりとした笑みを零す。
「姫、ね? どうせなら、終わった後にこうやって運んで、風呂入れろよ」
「仰せのままに」
執事のように畏まり答える俺に〝キャラじゃねぇ〞と、胸許の誓斗が笑った。
誓斗の寝室へと移動し、ベッドへそっと下ろした俺は、フリックの妨害を阻むべく、扉へと戻り施錠した。
冷めかけの熱を呼び戻すのに、時間は必要なかった。
1ヶ月ぶりのセックスは、否が応でも血が滾る。
しっとりと汗ばみ撓る背中さえも、俺の本能を刺激する。
俺は衝動のままにその背に指先を滑らせ、淫靡に揺らぐ腰を捕らえる。
獲物を狙う猫のように、高く上げた腰を燻らせる誓斗。
誓斗の孔は、無意識に揺らいでしまう身体に合わせるかのように、根本まで咥え込んだ俺のペニスを、きゅんきゅんと締めつける。
過ぎる快感から逃げを打とうと、シーツを掻く誓斗の手を掴み、その背に胸を押しつけた。
「なにも感じなくなるくらい……、なにも考えられなくなるまで、逃がさねぇよ」
湿り気を含む柔らかな茶色のクセっ毛に突っ込んだ鼻先で、誓斗の後頭部を擽り、頸を舐め上げる。
「ん……っ」
擽ったさに撓る誓斗の身体を、覆い被せた全身で、腕の中に閉じ込めた。
どうせ俺を見てくれないのならと、後ろから誓斗を抱いた。
でも、物足りなくなる。
たとえ俺に向けられなくとも、熱に浮かされ快楽に溺れたその顔を、…その瞳を見たくなる。
重ねていた上体を起こし、誓斗の腕を引く。
「ひ、ぅ………」
無理矢理引き起こした誓斗の身体を、両腕で囲うように抱いた。
膝立のような格好で交わるセックスは、誓斗の尻や腿を強張らせ、喰い千切ろうとするかのような圧が俺のペニスを締め上げる。
「く……っ」
快楽よりも強い痛みに、呻きが零れた。
それでも、抱き止めている腕を緩めるつもりなどなく、顎にかけた手で誓斗を振り向かせる。
「……は…、っ」
微かに笑った誓斗は、顔を寄せる俺の唇に喰らいつく。
「まだ、忘れらんねぇ……」
ぼそりと零された声は、きっと本心で。
それを裏づけるかのように、誓斗の瞳からは音もなく涙が溢れる。
悦に酔った快感の涙か、唯愛を想う悲哀のそれか。
間違いなく、後者なのだろう。
「忘れろなんて、言ってねぇよ」
忘れられるはずなど、ない。
俺は、考えるなと言ったまでだ。
この一瞬、この一時だけ、俺の与える快楽に溺れて、ほしかった……。
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