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勝手に座って居ればいい
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「家出しといて、なに言ってんだよ?」
きゅうっと眉間に皺を寄せたエイムの威圧顔が、僕に凄んでくる。
怖さに泣きたい気持ちを圧し殺し、僕は声を紡ぐ。
「ナイフは自分を切りそうになるし、銃は弾丸があらぬ方向に飛んでいくし……性処理の相手にも、サンドバッグにすらしてもらえなくて…あそこに僕の居場所なんてないって、わかったから……」
消沈した気持ちのまま、ぼそぼそと言葉を零した。
だから。あの家を出た。
だけど。2度と原井に会えないのだと思うと、ぎゅっと心臓が絞(しぼ)られた。
ぼろりと、僕の瞳から大粒の涙が零れていた。
「なに泣かしてんだよ」
呆れるテイルの声と優しい掌が、僕の頭に乗せられる。
「見た目怖いけど、上に殺されるの怖くて、震えて泣くようなヤツだから、そんな怖くねぇよ」
テイルの声には、くつくつとした笑いが含まれていた。
よしよしと撫でられる僕の頭に、エイムの苛立った声が落ちてくる。
「殺られるのが怖くて泣いたんじゃねぇよ。お前と離れんのが嫌だったんだっ」
チッと小さく打ち鳴らされる舌に、エイムの羞恥が滲んでいた。
「俺と離れ離れになるのが辛くて、泣いたんだ?」
テイルの声には、相変わらずの揶揄いの色が混じる。
「そうだよ。悪ぃかよっ」
泣いている僕を尻目に、目の前でイチャつき始めた2人に、心が弛緩する。
「やっぱ、原井…好きだし。傍に居たい……」
言うつもりなどなかった原井への想いが零れていた。
相手にも、されていないけど。
要らないのも、邪魔なのも、わかっているけど。
それでも。
「好きな人の傍に…、居たい」
言葉に、テイルの手が優しく僕の頭をぽんぽんする。
「俺たちの主軸は、殺るコトじゃない。基本は、窃盗。だから、お前を囲ってたあいつも殺らなかったし、金とお前らだけ盗んで終わらせただろ?」
なにを伝えようとしているのかを探ろうと、僕は瞳を上げた。
持ち上げた視界に、慈悲の溢れる優しいテイルの瞳が映る。
「ナイフも銃も、上手くなくていいんだ。ただ、お前が危なくないように、教えたいだけだと思うよ」
僕を安心させようと口角を上げて見せるテイルに、エイムの声が重なる。
「居りゃあいいんだよ。居場所なんて、勝手に蓙(ござ)敷いて、ここが俺の陣地だって我が物顔で座ってりゃ、勝手にできんだよ」
言い切ったエイムは、そのまま床に座り込む。
胡座をかいた足の上に肘を立て、頬杖をついた余裕顔が、僕を見上げた。
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