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想いよ、いつか
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思い立ったように腰を上げたエイムは、原井へ連絡を入れてくると席を外す。
僕はソファーの上で、いじけながらぼそりと不満を零す。
「少しでもいいから好きになってほしくて、いっぱいモーション掛けたんだけど、全部空振りなんだよね……」
はあっと溜め息を吐く僕に、テイルは嫌そうに顔を顰めた。
「恋愛は駆け引きなんだよ。押し続けたからって、実るもんじゃないでしょ」
呆れ顔で語るテイルに、僕は不満駄々漏れの声を上げる。
「だって、引いてるうちに、もぎ取った部分も、戻っちゃうじゃん。押して押して押し続けないと、こっちなんて見てくれないもん」
うぅぅと低く唸る僕の耳に、エイムの声が飛んできた。
「もぎ取った感情なんて、直ぐ腐るぞ」
声に向けた瞳には、テイルと同じ呆れ顔をしたエイムの姿が映る。
「実ってないのに毟ったって、ダメになるに決まってんだろ」
子供でもわかるぞと言わんばかりの瞳が、僕を見下ろしていた。
目の前まで寄ったエイムは、先程と同じような位置に腰を据え、僕に言い聞かせるかのように、ゆるりと話す。
「無理矢理振り向かせたって、そんなの一瞬だろ。それに、なんの想いも詰まってねぇもん手にしたって、虚しいだけだろ」
エイムの言葉に核心を突かれた僕は、低く唸り返すコトしか出来なかった。
部屋に、インターフォンの音が鳴り響いた。
インターフォン越しに、開いていると告げるテイルの声と同時に、原井が部屋に乗り込んできた。
「心配させんなっ」
叩くというほどではないが、頭に乗った原井の手には、力が入っていた。
「心配、してくれたんだ?」
ぽつりと漏らした僕の言葉に、原井の声は苛立ちを滲ませる。
「当たり前だろうがっ」
投げ捨てるように放された手に、原井の顔を瞳に映す。
苛立ちと呆れが綯交ぜられたような表情で、原井は言葉を繋いだ。
「銃もナイフも碌に使えないわ、体術も知らねぇわ、金もねぇわ……放り出されたら死んじゃうって言ったのお前だろうがっ」
きゅっと眉根を寄せ、詰めてくる原井に、身体が縮こまる。
僕の怯えを感じ取った原井は、はあっと息を吐き、気持ちを整えた。
「見えないところだったとしても、お前が死ぬのは嫌なんだよ。傷つくのも、居なくなるのも、本望じゃない」
苦々しい顔で紡がれる言葉は、僕にとっての甘い蜜。
「俺の傍に居たいって言ったのお前だろ。なら、ちゃんと、ここに居ろ」
原井は真横の床を指差し、ぴしゃりと言い放った。
あれ…? 僕、原井の心の中に居る?
きょとんとした瞳で見上げる僕に、原井はどこか恥ずかしそうに視線を逸らした。
「ほら、帰るぞ」
頭の上に、ぽすんと乗せられた原井の手に誘導されるように、僕はその隣で前を向く。
原井の心の隅、さらに端っこ。
ちょっとは、僕が居ていい場所が出来ていた。
エイムが言う通り、我が物顔で座っていたら、いつの間にかそこに僕の居場所が出来ていたらしい。
この小さな小さな居場所を足掛かりに、じりじりじわじわと、蝕むように少しずつ。
いつか、想いの籠った感情を手に入れられるように、僕は原井の心を浸蝕していくコトにした。
【 E N D 】
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