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episode 1
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眩しい朝日に、思わず目を細める。
体を少し起こそうとしただけで、ズキンズキンと頭が割れそうに痛んだ。
「いってぇ……」
昨夜は、久しぶりに会った地元の仲間達と、とにかく羽目を外しまくり深夜まで居酒屋で馬鹿騒ぎしたんだった。
解散する時は、すでに酩酊状態で……途切れ途切れの記憶しかない。
あんなに飲んだの、いつぶりだっけか?思い出せないくらいだった。
起きるのを諦めて、もう一眠りしようと近くにある抱き枕を引き寄せた。
そして、この週末は何もしないで寝て過ごそうと、そっと心に誓う。
フワフワの抱き枕に顔を埋めて、目を閉じようとした瞬間……。
「えっ?」
俺が引き寄せた抱き枕は、凄く温かいんだけどゴツゴツしている。その予想外の感触に、眉をしかめた。
薄暗い室内を見渡せば、自分の家ではないことにも気付く。
「ちょっと待て……ここどこだ?」
クルンとうつ伏せになり、上半身を起こす。
突然の思いがけないシチュエーションに、強い不安に襲われた。冷静に現状を把握しようとするんだけど、パニックってしまいそれすらできない。
「あ、ここ…あいつん家だ……」
俺は絶句してしまう。
最悪の事態。全身の血の気が一気に引き、体がみるみる冷たくなっていった。
歯がカタカタと音をたてて震え、体は冷えきっているのに、嫌な汗が全身から吹き出る。
思わず発狂したくなる衝動を、必死に圧し殺した。
「しかも俺、全裸だし……」
泥酔して意識がぶっ飛んだ翌日、知り合いの部屋で全裸の自分。この流れで次に想定されることは、たった一つ。
そう。俺はさっきの抱き枕の正体を確認しなければならない。あの抱き枕は、一体誰だったのか……。
その抱き枕の正体。その相手と……きっと『何か』があったのは、いくら馬鹿な俺でも簡単に想像がつく。
『何か』じゃない。布団の中で、しかも全裸ですることと言ったら、一つしかないだろうに。
心臓が口から出そうなくらい、バクンバクンと拍動を打つ。
俺は震える手で、そっと掛け布団を剥いだ。未だに、俺の隣で寝ている人物は夢の中らしく、微動だにしない。
掛け布団を取り除いて、その顔を覗き込み言葉を失う。
全身の力が抜けきって、意識が遠のいていくのを感じた。
「嘘、だろう……」
発する声にいつもの勢いはなく、虚しく空に消えていく。
涙が溢れそうになるのを、必死に堪えた。
「なんで、なんでお前なんだよ」
夢であって欲しいと、心の底から祈った。だって、信じられない。
ううん。信じたくない。
「どうして?どうして碧なんだよ」
俺の隣には、自分と同じ生まれたままの姿で眠る碧がいた。
碧は、小学校からの幼馴染で、高校も同じ学校へ当たり前のように進学したし、勿論大学も同じ所に通っている。
そんな碧は、俺にしてみたら1番の親友だ。
いつも一緒にいるのが当たり前。それでも、家族というカテゴリーでもないし、恋人というカテゴリーでもない。なんとも言えない微妙で、それでいて絶妙な関係だった。
俺がすぐ隣で、こんなにも1人悶えているのに、余程深い眠りなのか、疲れているのか……普段寝起きのいいこの男が、全く起きる素振りを見せない。
その、穏やかな寝顔に、堪えていた涙が溢れ出した。
「なんでこんなことに……」
かけがえのない友達と、自分は取り返しのつかない過ちを犯してしまった。
俺は、碧を抱いたんだ。
その時の記憶がなければ、どんなに救われただろうか。
「もしかしたら、ふざけて全裸になって、寝ちゃっただけかもな?」
なんて、笑ってお仕舞いにできたかもしれない。
でも、俺にはきちんと、その部分だけの記憶が残っていた。
碧の想像以上に柔らかい肌に唇。堪えきれずに漏れた、甘い吐息と喘ぎ声……結ばれた部分がいやに熱かったこと。
そして、親友を、男の碧を躊躇いもなく抱けたことを。
「ぶっちゃけ、メチャクチャ気持ちよかったんだよなぁ」
俺は頭を抱えて、低く唸った。
「てか、今まで1番気持ち良かったかも」
もう長いこと、彼女なんていないから、そういった行為自体が本当に久しぶりだった。
だからこそ、異常に燃えた自分がいた。
簡単に、友達とか、同性とか……そんなハードルを飛び越えてしまった。
純粋に、人肌が恋しかったのかもしれない。
「ごめんな」
今もなお、夢の中の碧に謝罪する。
俺は大切な親友を、自分の欲望の捌け口にしてしまった。そんな罪悪感を感じたから。
だって、昨日は碧の他に男友達はたくさんいたし、勿論女の子もいた。
それなのに俺は、その中でも、一番優しくて、いつも自分のワガママを聞いてくれて、何より、見た目の整っている碧を選んでしまった。
明らかに、確信犯としか思えない。
俺は、自分の欲望の為に碧を利用したんだ。
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