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episode1
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「はぁぁぁぁぁ」
「凄い溜息だな。またフラれたの?」
「うっせぇよ」
「ふふふっ。本当に懲りないよね」
尚央(なお)の目の前で、幼馴染の新が盛大な溜息を付く。もう何度もこんな光景をすぐ隣で見てきた尚央は、「可哀そう」を通り越して「良くやるな」と思ってしまう。
一体、何度フラれればこの友人は諦めが付くのだろうか。
「もういい加減、バスケ1本に絞って熱中したら?」
「わかってるんだけど、やっぱり性欲には勝てねぇもん」
「性欲かぁ……。でも、もうすぐ3年が引退して、新が部長になるんだろうから、忙しくて彼女どころじゃなくるよ?」
「ならいいけどな……」
「ん?なんだよ?」
昼食の焼きそばパンを頬張りながら、ふと視線を感じた尚央は思わず眉を顰めた。
「尚央はさ、何でそんなにイケメンなのに彼女作らないの?」
「はぁ?なんだよ突然」
「だっておかしいジじゃん!?あんなに女の子にモテるのにさ」
「彼女を作らない理由なんて、お前が一番わかってるだろう?」
「え?実は男が好きとか?」
「馬鹿。違うよ」
尚央は溜息を付きながら新を軽く睨み付ける。
「俺が、みんなに何て言われてるか知ってる?」
「へ?地球外生命体?」
「そう!地球外生命体に、人間の彼女ができるわけないだろう?」
「そうかなぁ?確かに尚央は変わってるけど、そこを含めていいのにな?」
「別に励ましてくれなくてもいいよ。俺は、ずっと一人で生きてく覚悟があるんだからさ」
そう言いながら、残りの焼きそばパンを口に放り込む。
「そっか……何か勿体ないなぁ」
新が、子供みたいに唇を尖らせた。
高校に入学して、容姿端麗の尚央は一気に女子生徒の注目を浴びることとなる。加えて、スポーツも勉強もできる尚央は、学校中の女生徒の憧れの的だった。
しかし、そんな尚央にいつしか付いたあだ名は『地球外生命体』。それもそのはず、尚央は幼い頃から両親が心配する程の変わり者だったのだから。
集団行動は嫌いだし、そもそも人に合わせようという気がない。自分は自分で、人は人。
考え方だって、他人と比べて、左斜め上から更に右斜め45°に傾いているという自覚はある。
なんでドーナツに穴が空いているのかも気になるし、蟻の行列の中にいるサボっている蟻に心底腹が立つ。犬はお手ができるのに、猫がお手を教えられない理由だって不思議で仕方ない。
普通の人が考えないことに疑問を感じたり、強い興味を惹かれてしまう。
当然、クラスメイトに馴染めるはずもないし、変わり者のレッテルを貼られてしまっても仕方ないな……と、尚央は自分で思うのだ。
「でも、俺は尚央と気が合うんだよな」
「だろうな?お前も相当変わってるから」
「俺達、所詮似た者同士なんだろうなぁ」
「ふふっ。だから、彼女にフラれちゃうんだよ」
今まで、尚央が居心地がよかった場所は、ゲームや漫画の中の世界だけだった。
でも今は違う。尚央は新の傍にいることにも、居心地の良さを感じている。新からは、自分の同じ匂いがするのだ。
「俺等は、彼女なんてできない運命なのかな?」
新が寂しそうに笑うから、尚央の心もズキズキッと痛んだ。
「新は良い奴だから、きっとお前を理解してくれる子が現れるよ」
項垂れる新の頭を、尚央はそっと撫でてやった。
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