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episode2
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「恋、か…」
スマホゲームする手を止めて、尚央はポツリ呟く。
少し前に、同じクラスの友達に恋愛について聞かれた事があった。
そんな事放っておいてくれればいいのに、女の子にモテる尚央がいつまでも彼女を作らない理由が、不思議で仕方ないらしい。
「でもさ、好きな子くらいいるんだろう?」
クラスメイトに肩を組まれ、しつこい尋問を受ければ、もう逃げられない……と、尚央は小さく溜息をつく。
そもそも恋愛に興味のない尚央からしたら、こういった恋バナはめんどくさい以外の何物でもない。
「しつこいぞ」
そうクラスメイトを引き離そうとした瞬間、
「尚央、好きな子いるの?」
「え?」
不安そうな新の声が聞こえた。
新の方を見れば、今にも泣き出しそうな顔をして、自分を見つめている。
(なんで新がそんな顔するんだよ……)
尚央はそんな新に、酷く戸惑ってしまった。
「尚央、好きな子いるの?」
確認するようにもう一度問いかけられれば、尚央の心臓はトクトクと高鳴り出す。
「なぁ、いるの?」
「す、好きな子なんかいないよ」
「本当に?」
「しつこいな、本当だよ!」
「そっか……」
「え……」
あからさまにホッとしたような表情をした新を、尚央は不思議そうな顔で眺めた。
「なんだよ、新!尚央に好きな子がいなくてホッとしたのか?」
「あははは!新、超尚央のことが好きじゃん!?」
「うっせぇな、放っとけよ」
クラスメイトに冷やかされて、顔を真っ赤にしている新。でも、心の底から安堵した顔をしていた。
「なんなんだ、あれは」
尚央は綺麗な眉を寄せながら、小さく呟いた。
それでも、自分にとって恋なんて無縁な存在だ……そう尚央は思えてならなかった。
「尚央!今日部活休みだから一緒に帰ろ!」
「あ、うん」
普段、夜遅くまで部活をしている新。それに比べて尚央は不思議ちゃんが集まるという、化学部に所属していた。
当然、帰宅時間もバラバラだから一緒に帰ることなんて滅多にない。
だから、尚央と一緒に下校できることが余程嬉しいのか、新はニコニコしている。
高校の最寄り駅に着いた時、新がポツリ呟く。
「なんかさぁ、腹へったな?」
「そうだねぇ。コンビニでも行く?」
「え~、めんどい。尚央が何か作ってよぉ。お前料理得意じゃん」
「でも俺ん家、食材全然ないと思うよ?」
「えー!つまんない」
「ふふっ。本当に新は子供だね」
いつもはしっかり者の新が、自分の前では我儘を言ったり甘えたり……そんな素の表情を見せてくれることが、尚央は嬉しかった。
それだけ、自分に心を許してくれているような気がするから。
奇抜な発想をして周囲に驚かれる新に、ド天然の尚央。
2人とも変わってるけど、その変わり方は全然違う。でも、どことなく似ていて、一緒にいても気を使わない。
それこそ、長年連れ添った夫婦みたいだ……と、尚央はいつも思う。
お互いの家に行っても遠慮なんかしないし、開けっ放しでトイレもできる。オナラをされても気にならないし、遠出をしても喧嘩することはない。
それでも、空気みたいな存在……っていうわけでもない。
なぜなら、一緒にいることが凄く楽しいし、居心地がいいから。
何時間一緒に語り合っても話は尽きないし、何年一緒にいても飽きない。
クラスメイトには見せられない、本当の自分を曝け出すことができた。
尚央は不思議でならない。
『あなたを理解できない』
そう言って、新の元を去って行く女の子達を。
確かに新は変わっているし、理解できないことはあるかもしれないけど、それが彼の長所であり、愛すべき所なのだ。
(本当にわかってないなぁ)
尚央は、新の別れ話を聞く度に憤りを感じていた。
「やっぱり新、コンビニに行こう?」
「………」
「おーい、新!コンビニ行こう?」
「……ん?……わぁ!?」
尚央が突然、新の顔を顔を覗き込めば、新は目を見開いてびっくりした顔をしている。
「あ、うん!コンビニな?」
「……変な新。何ボンヤリしてんだよ」
あまりに慌てふためく新を見た尚央は、つい吹き出してしまった。
2人でコンビニに行けば、お互いの好物を知っている者同士、
「尚央、新発売のお菓子あったよ?」
「こら、新。少しは野菜食べなよ?」
などと、自分のことだけではなく相手のことまで気になって、お互いが世話をし合ってしまう。
コンビニの袋を下げて、他愛もない話をしながら学校から近い新の家へ向かう。
下らない話なのに、2人でいるっていうことが楽しくて、お腹を抱えて笑った。
何より、2人で一緒にいられる……ということが嬉しくて仕方なかった。
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