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誰もが知っているが、実際に足を踏み入れた者は少ないと称される、とある娼館が存在する。
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日向創は今時珍しい苦学生だ。
両親の理解を得られずに有名校への進学を決意し、努力する彼をほっぽり出して、ろくに省みない。
学力だって悪くはない。学力以外の資質だって悪くはない。人並みだ。
しかし、県下一の進学校で首席を取ったくらいでは、その学校へは進学できない。必要とされるのは、それ以外の才能だ。才能と呼ばれる能力だ。
何故その学校に惹かれるのかはわからない。
ただ、強烈に才能という不確かなモノに憧れる自分には、幼い頃から気づいていた。
それは半分は天才と呼ばれる、産まれた時に既に備わっている賜物とも言える何かで、半分は本人の努力ではないだろうか?
才能がすべて産まれた時にあるかないか決まっているのはツマラナイ。不公平だ。おかしい。
そりゃ周りにいる全員が等しく何かの才能持ちだったら、ある意味人生はツマラナイのかもしれない。
でもそれは持っている者の傲慢なのではないか。
運動選手の秀でた身体能力は、何者にもなれる可能性を秘めているのに、その競技を選んだのは、やはり努力という残り半分の可能性ではないのか。
すべての能力値が平均にあたる自分も、努力次第で何らかの才能が開花する可能性があるのでは、ないのだろうか?
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ツマラナイ。
何もかもツマラナイ。
自分にはこれ以外生きる道を考えられないし、選ぶつもりもない。
逃げ出そうとか、他の道を模索したこともあるけれども、結局は同じ場所に戻って来てしまった。
忌み嫌われず、生温い水の中でたゆたっているような、ひたすら快感を負えばいいだけのようなこの場所は、居心地がいい。
何もかも与えられているのに、自由だけがない。
いや、足枷も手枷もないのだから、多分自分は自由なのだろう。
逃げる意志が全くないのだから。檻ですらない。
それでも、才能という何かに縛られている。この先も。その先も。多分しぬ迄。
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切れ長の瞳を持った役員に喘がされ後、狛枝は久しぶりに下界に降りた。
あの、うす紫の短髪の男は本当にツマラナイ。
才能というモノに心底惚れ込んでいるのに、自分から手を出そうとすらしない。喉から手が出る程希求しているのに、決して自らは動かない。
それはもしかして、才能というシーソーに釣り合う不運を受けるのが怖いのかもしれないし、飽くまでも傍観者でいたいだけなのかもしれない。知りたくもないし、分かりたくもない。
フラリと立ち寄った部屋で、スーツのままの彼にしな垂れかかり、一方的に事を終え、外出の許可をもらった。
ボディーガードはいらないと言ったハズだが、きっと素人の自分に見えないところでSPがついているのだろう。
彼の才能があれば、本人に不運が及ぶことは、そうそうないハズなのだが。
なぜならばそれが才能なのだから。
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丁寧に男の残滓を洗い流した後で降り立った下界は見るも無惨な様子を湛えていた。
野卑な酔っ払いの声、下品な色を売る人、露店や吐瀉の饐えた匂い。
ツマラナイ。
結局自分のいる御殿も下界も同じコトをしているだけじゃないか。金額の差があるだけで。
ツマラナイ。
本当にツマラナイ。
「………ツマラナイですね…」
迷い込んだ露地の奥に髪の毛おばけがいた。
東洋にも西洋にも同じようなデザインのイキモノが描かれているんだから、やっぱりおばけは本当にいるのかもしれない。
…などと、多少混乱した頭で何度か瞬きをすると、それが成人にはならない年齢の男性ということが見て取れた。
思わず自分の思考を読まれたのかと面を上げると、緋い瞳と視線がぶつかった。
「…本当に…ツマラナイ…」
「…ねえ…だいじょうぶ…?」
屈み込んで彼を覗き込む。
暗闇で漆黒のスーツを着込んでるので、よくわからないが多分同じくらいの身長なのだろう。
怪我をしているのかはわからないが、かなり疲弊しているのが見てとれる。
長い長いくろかみ。サラサラと白い貌を流れ落ち、地面に渦を巻いていた。触ってみたい。
「…汚れますよ……」
「構わないよ」
正面から視線を合わせて言って来る男に興味を覚えた。彼の居るところで彼に視線を合わせて来る奴は滅多にいない。あの短髪の彼ですら、気づくと視線を外しているのだから。
壁に体重を預け、手足を投げ出している彼の長いくろかみを踏まないように膝をつき、ゆっくりと手を伸ばした。
純粋なくろかみを見るのは久しぶりな気もする。ただ、ただそれだけの好奇心だった。
この男が心底危険であるならば、既にいろいろな横槍が入ってるハズだろう。
昔、練った絹を触らせてもらったことがある。丹念に練られた絹は高級品ということで、彼の手元に下賜されたのだ。そのうすものはそのまま彼を覆い、次の伽の時に使われたことを覚えている。
それと似ているなあ、と安気に男の髪を触っていたのに気を取られ、気を失った男が自分に倒れ掛かって来たのはしばらく後のことだった。
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