アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
02
-
゚+.゚+.゚ .。゚+.゚+.゚ .。゚+.゚+.゚ ゚+.゚+.゚ .。゚+.゚+.゚ .。゚+.゚+.゚
「記憶喪失?」
何それバカじゃない?と言外に匂わせた彼を胡乱そうに見遣ったのは、たまに来る医者である。
男を拾って来た、とあっさり人間一人を持ち帰って来たことにもちろん一悶着はあった。
下界の人間を入れるだなんて、金はあるのか、殺せとは言わないから棄てて来い、下手に情を掛けるのは余計な残酷さだ、散々言われた。
しかし、彼は何もいわずに彼らの攻撃をやり過ごしていた。本気で排除する気なら、一緒に門をくぐる前に彼は息をしなくなっていたハズだ。
つまりそれは、
「キミは誰にもひつようとされてない人間なんだね………」
門をくぐる前に彼らは人物照合は既に終えている。そうでなければ額なり心臓なりを撃ち抜かれて汚水に流されているハズだ。
もし彼ごと排除されるとしても、彼を拾ったことを後悔はしないだろう。
しかし自分の我儘が通ったということはつまり、
「身代金を払ってくれる家族もいないの?…手切れ金をもらってくれる恋人もいないの…ツマラナイ人生だね…」
拾って来た男を見るなり守衛に引き離され、消毒というか洗浄というか滅菌という名の身辺整理をされ、別室に尋問という名の監禁をされ、久しぶりに会った彼は昏睡状態で、
「ツマラナイな…」
「お前のお得意のツマラナイか」
眠る彼の横には医者がいる。そしてその向かいに自分がいる。
「病気も投薬も疾病も既往症も怪我も何もないのに寝ているのは、ツマラナイとは言えないんじゃないのか?」
眠る彼よりは美人面の医者を見遣る。そういや彼もくろかみだ。でも、
「彼は黒髪ではないんだね…?」
みりゃ分かるだろう莫迦が、と呟く医者は完璧な黒髪だ。しかもたまに寝癖がついていて、頭頂部の一束がぴょこりと持ち上がっていたりする。
眠る彼はくろかみではあったが、漆黒ではなかった。明るいところで見ると、不思議な色合いだ。でも、とにかく長い。
そして汚れを洗われた彼は、意外と精悍な顔つきをしている。
あの瞳の色をもう一度見たい。
外見のうつくしさは、権力にも嫉妬の対象にもなるのだから。
彼の目覚める瞬間を見てみたい。その双眸を明るいところで見てみたら、どんな気持ちになるのだろうか。少しは愉しいことがあるのかもしれない。
負担になるから帰れと、口の悪い医者に追いやられながら、目を覚ましたら、1番に教えてね、と念を押して彼は部屋を出るのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 5