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第三話 里の仲間(二)
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突然降ってきた情報に頭が付いていかず呆然としていると、はあはあと肩で呼吸をしながら慶都の母親もやって来た。ちっとも落ち着かない慶都の首根っこを引っ張って立珂から引きはがすと、ごめんなさいね、と微笑み薄珂と立珂をぎゅっと抱きしめてくれる。
「長老様のお許しが出たわ。二人ともうちにいらっしゃい!」
慶都の母は息子と同じことを言って微笑んだ。それはとても有難い言葉だったが、あまりにも突然のことで現実味が無い。薄珂と立珂は顔を見合わせて首を傾げた。
「えっと、何で急に?」
「二人が兎獣人を助けてくれたからよ。なら仲間も同然だって」
「天藍のこと? 籠引っ張っただけだよ」
「でもそれが無ければ落ちて死んでたかもしれないですよ」
「孔雀先生」
「自警団が来る前に助けるなんて形無しだ」
「まったくだな。俺の恩人は引き上げてくれた薄珂と救助方法を考案した立珂だ」
「金剛。天藍」
「命懸けで獣人を助けたんだから里も二人を守るべきだって筋書きだよ。これが証拠品だ」
天藍が薄珂に手渡したのは血の付いた服だった。怪我をした天藍に貸したのだが、何故か慶都が持ち去ってしまったあの上衣だ。
「薄珂は自らが怪我をしてまで助けてくれた、ってな」
「え? これ天藍の血だよ」
「そこは嘘も方便ってやつだ」
「慶都、お前まさかそのためにこれ持ってったのか?」
「へへーん! これなら里のみんなも納得すんだろ!」
「……長老様こんな曖昧な話で良いって言ったの? 雑じゃない?」
「長老様も口実が欲しかったのよ。本当に追い出したいなら小屋を使わせてなんてくれないわ」
「それはそうだろうけど」
「ただし条件付きよ。慶都は獣化を我慢すること」
「するする」
慶都の母はにっかりと笑う息子の頭を撫でると、同じ息子であるかのように薄珂と立珂のことも撫でてくれた。いつもの申し訳なさそうな苦笑いでは無く、嬉しそうににっこりと微笑んでいる。
「さあ引っ越しよ! 荷物は後で金剛団長が運んでくれるわ」
「でも、あの、僕は迷惑かけるだけだよ。本当に何もできないんだ。多分みんなが思うよりずっと」
「あら。立珂ちゃんには一番大変なことをやってもらうわよ」
「う?」
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