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暗闇 side陽斗
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「晩御飯は冷蔵庫に入ってるから温めて食べてね。お母さんずっと携帯持っておくから何かあったら電話してね」
「わかった!」
今日は、お母さんとお父さんの結婚記念日
2人とも仕事をしているから、なかなかお互い休みの日が合わず、行けていなかったが、今年は2人とも休みがとれた
だから今日は日帰りで旅行に行くらしい
僕は学校があるから、先に出発する2人を見送る
お母さんもお父さんもこの日を楽しみにしていたようで、2人ともウキウキだ
「じゃあ行ってくるね。」
「いい子に待ってるんだよ」
「うん!行ってらっしゃい!」
2人を見送って、僕もいつものようにりょうくんと一緒に学校へ行った
今日も普通に過ごせると思っていた
りょうくんと笑い合って、クラスメイトともお話しして
そう思っていた
「春日くん!急いで職員室に!!」
「え?」
五時間目の授業のチャイムが鳴り終わると、先生の焦った声がクラスに響いた
クラスのみんなは「何事??」と不思議な顔をしている
走ることはできないので、早歩きで職員室に向かう
りょうくんにも途中までついてきてもらっていたが、職員室は1人で入った
告げられたのは、お母さんとお父さんが車の衝突事故で病院に搬送されたと言う内容
先生曰く、2人とも意識不明の重体
現状に頭が追いつかない
頭が一瞬にして真っ白になった
___お母さんとお父さんが……事故…?
2人ともあんなに楽しみにしていたのに…
「とりあえず、先生が病院まで送るので春日くんは自分の荷物を教室から持ってきて病院に向かう準備をしてください」
そこからは、もうどうやって病院に行ったのか、どこの病院に行ったのかなんて、一切覚えていない
りょうくんが何度も隣で「大丈夫だ」って言ってくれてた気がする
ただ頭の中にあるのは、今朝ふたりが出かける前のお母さんとお父さんの笑顔
それだけが脳内にずっと浮かんでいる
お母さん、お父さん、お願いだから、無事でいて...__
「私たちも全力を尽くしましたが、お二人ともつい先程息を引き取られました…」
僕が病院に着いた頃にはもうすでに遅く、意識不明で搬送されそのまま病院で亡くなったらしい
こんなの、うそだ………
いやだ…嫌だよ……
胸の辺りをぽっかりと穴を開けられたような感覚に陥る
頭が理解を拒絶しようとしているのか、まだ理解が追いついていないのか、僕はこの時泣かなかった
ただ残るのは漠然とした、でも確実な、喪失感
この日を境に、人生暗闇へと沈んでいった
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