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ナツと目が合ったと思ったのは、錯覚じゃなかったみたいだ。
「ハル」
入学式の会場を出たところで声をかけられて、にこやかに話しかけられた。
「入学おめでとう。ビックリしたぜ」
「うん……オレも」
ぎくしゃくとうなずきながら、頬が熱くなってくのを自覚する。
「1人か?」
「あ、母と一緒だけど、今から保護者向けの説明会あるって」
説明しながら講堂の方を振り向くと、ナツは「成程ねぇ」とうなずいた。
「どこの家でもやっぱ、こういうのは母親が来るもんなのかな? うちもそうだった。まあ、うちの親父は息子になんか興味ねーんだろうけど」
ナツのぼやきに、「へえ」と曖昧に返事する。
じゃあナツのお父さんは留守がちなんだろうか? うちの父もそんな感じではあるけど、それは単に残業と休日出勤が続いてるせいだ。
どのみち、互いの父親の生活状況なんかはどうでもいい。
それより気になるのは、周りの視線の方だった。ナツが応援団の詰襟を着てるせいもあるんだろう。さっきからいろんな人が、オレとナツとをチラチラ見てる。
ナツもそれに気付いたのか、移動しようと促された。
自然な仕草で肩に腕を回されて、人前だっていうのに照れる。
ナツは平気そう? これくらいの軽いスキンシップなんて、彼にはいつものことなんだろうか?
「ナツ、見られてたね」
「それはお前が美人だからだろ」
「まさか……」
オレのことをそんな風に誉めてくれるのはナツだけだ。そういうナツこそ、格好良くて男にも女にもモテそう。
「いやマジ、キレイだって。壇上からでも分かったもん」
くしゃりと髪を撫でられて、隣を歩く男を見上げる。白い手袋越しにも、その指は優しい。オレが返事をする前に、ナツが整った顔をふと寄せた。
「スーツも似合うな。すげーエロイ」
耳元で囁かれた瞬間、ぼんっと赤面したのが自分でも分かった。
なんて答えたらいいのかうろたえてると、ふふっと笑われる。「ウブだなぁ」って言われた。
「そう、かな。でもオレ……」
「あー、それなりに経験あるのは分かってるよ。けどさ、こうして口説かれたり、スキンシップされたりっての、慣れてねぇじゃん?」
そう言われると確かにそうかも知れなかった。
始めは食事に誘われたり、2人きりの特別補講に呼ばれたり、手を握られたりした覚えはあるけど、何度か寝た後……夏休みの終わる頃には、徐々にそっけなくされてたかも知れない。
結局、付き合ってた訳じゃなかったってことだろう。
「前の男がどんな奴だったかは知らねぇけど、そいつと比べてオレはどうよ? 悪くなかっただろ?」
自信ありげなナツの言葉に、「うん」とうなずく。
悪くなかった。それはそうだ。もしかすると無意識に先生と比べてしまってたこと、ナツは気付いてたのかも知れない。けどその上で、自信もって胸を張れるとこ、スゴイと思う。ドキドキする。
「過去は忘れて、オレにしとけよ」
そんな甘い囁きを、本気に受け取っていいんだろうか?
また遊ばれてない? こんな格好いい人が、モテない筈はないと思う。独り占めできない恋は、もうしたくない。
けどその一方で、彼にまた抱かれたいと思ってるオレもいる。
セックスの相手なんて、誰でもいい筈なのに。やっぱりオレは、こういう顔が好きなんだろうか。
「それ、口説いてるの?」
照れ隠し半分に尋ねると、ナツは「当然」って笑った。
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