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【三歩】-10
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ホテルの鍵を受け取り部屋に入ると、肩に回されていた腕を外して男をベッドに横たえた。
「シャワー浴びてくるよ」
「ん……」
この様子なら放っておけば早々に寝てしまうだろう。イメージ通りの展開に口元が緩んだ。今夜は楽して安眠を得られそうだ。
男漁りはするが、幸平は別段セックスが好きなわけではない。相手が洋之なら話も別だが、できることなら体にかかる負担は軽い方がいいに決まっている。
明日も朝からいつも通り仕事なのだ。数時間も寝たら始発で帰ることになるだろう。シャワーを浴び直して新しい下着を身につけて、今日と違うスーツで出勤する。それがいつもの幸平のパターンだった。
タバコ臭さの染みついたシャツを脱ぎ、熱いシャワーを頭から浴びる。贅沢にお湯を出しながら、全身の汚れと一緒に体の中を埋め尽くす黒い汚泥も流れていけと、肌の上で弾ける水に幸平は切に願った。
「だめだ、汚いな……」
頭上から降り注ぐ水はこんなに澄んでいるのに、幸平が手に掬って覗き込んだ瞬間、水は濁って底が見えなくなってしまった。掌でたぷんと音を立てるそれを、溜息と共に排水溝に流していく。毎日毎日これの繰り返し。禊の時間はいつも失敗に終わる。
幸平は代わりに瞑目して、健康的に焼けた洋之の肌を思い浮かべた。感触は知らないがいくらでも想像はできる。肌目は繊細ではないが、ハリがあってすべすべだ。
顔はどうだろう。洋之の恍惚とした表情をイメージする。その快楽を与えているのはもちろん自分だ。自然と息が荒くなって、幸平は自身の怒張したものを握りしめた。
「ひとりで楽しんでるのか?」
突然後ろからきこえた声に幸平は飛び上がった。反射的に後ろを振り返るとさっきまでベッドで泥酔していたはずの男がいる。しかもその声は酔っている割に妙にはっきりしていて、その瞳にはしっかりとした男の意思が宿っていた。
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