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【三歩】-12
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男の趣味なのだろうか。浴槽にバブルバスの入浴剤を入れるようにいわれ、泡だらけになった湯船に幸平は足を入れた。後ろから男も幸平の体を股に挟むようにして入ってくる。男の性器が背中に当たり、ぞわりと嫌な寒気を感じた。
元々この男に嫌悪を抱いていたわけではなかったが、酔った振りをしていたときいた時から幸平の中の何かがこの男を受け付けなくなっていた。生理的にというやつである。
泡の下で男の手が幸平の性器を弄っても、さっきまでの元気はどこにもなかった。それどころかこれでもかと萎縮している。それなのに男は何を勘違いしたのか耳元で「緊張してるんだね」と気持ちの悪い声で囁いた。
逆上せそうになりながらもしばらくは我慢していたが、男の指が後孔を探りあてると、さすがに幸平は体を強張らせた。
「あ……いや、そこはちょっと……」
「なんだまだ慣らしてなかったのか。わかった、僕が準備してあげるよ。ほら、足を上げて」
「違っくて、今日はその……」
幸平が足を上げるのを拒むと背中の空気がヒヤリと冷たくなったように感じた。浸かっていたお湯もまるっと冷水に入れ替わったようだ。
「なんだ、ユキくんはセックスする気がないのか。酒代だって僕が払って、どうせこのホテル代だって僕持ちなんだろ?大丈夫、気持ち良くしてあげるから心配はいらないよ」
首筋をねっとりとした男の熱い舌が這っていく。浴槽の泡はいつの間にかなくなっていて、丸見えになった乳首を男の手が捻り上げた。
「ッ、無理、です……ほんと……すみませんっ」
幸平はざばりと湯船から立ち上がると、入浴剤の滑りを取ろうとシャワーの栓を捻った。
「お金は、きちんとお支払いするので。だから今日は……っ」
「ユキくん、それはないよ」
後ろから伸びてきた腕に抱きすくめられて、幸平は喉を引きつらせた。わずかだが殺意にも似た気配を感じたのだ。
「お金じゃないんだよ。僕はずっと君を想っていたんだ。僕が君を見つけた時にはいつも君はすでに違う男を連れていた。それが今日ようやく独り占めできたんだ。このまま帰すわけにはいかない」
「そ、んなこといわれても……」
こんなことははじめてだった。声が震えて、膝も笑っている。声音は優しげだが体を拘束する男の腕には優しさがなかった。
「わかった。気分がのらない時は誰にだってあるからね。ユキくんが僕と交際すると約束してくれたら今日は帰らせてあげるよ」
タチの悪い冗談だ。しかし鏡に映る男の目はこれが冗談ではないのだと幸平に伝えている。
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