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【三歩】-23
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心を抉られるような音が響き渡った後に、パシンッと乾いた音が幸平の頬を打った。目の前に星が飛び、一瞬体がぐらりと揺れる。痛みは半歩遅れてやってきて、じんじんと頭に響くその痛みに、幸平は無意識に打たれた頬に手を添えていた。
「幸兄……それはダメだよ」
「はは、結婚するんだってよ」
「ああ、ユキは結婚する。でも今までと何も変わらない。俺たちは幼馴染みで、幸兄はユキの兄貴なんだから」
わかっていた。自分が実の兄である以上、洋之の一番に成り得ないことは。それでも、心の片隅ではどこか期待していたのだ。いつか自分の想いに応えてくれる時が来るのではないかと。これからも二人でずっと手を取り、助け合って生きていけるのではないかと。そこに赤の他人が割り入ってくることなど想像もしていなかった。
割れたマグカップの上にへたり込みそうになった幸平の体を、智明は腕を掴んでぐいっと引き上げた。昔の米俵のように肩に担がれ、短い廊下を運ばれる。あっという間の時間が途方もなく長く感じられた。
ベッドに着くと逆さに揺れていた景色が勢いよく反転し、落下した体は天井と智明の顔を視界に納めて、停止した。跨ぐように智明が覆い被さっている。またあの顔だ。
指を絡め縫い留められて、抵抗する間もなく唇が塞がれる。息継ぎをすれば、智明の差し入れられた舌からは自分よりも強いアルコールの香りがした。
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